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1873.11.29(Sat)

 私はしばらくも心の休まるときがない。遠い遠い人のいないところへでも身を隠したく思う! そうしたら、また元の私になれるかも知れない。
 私は嫉妬、愛、せん望、幻滅、傷つけられた自愛、といったような世界中のあらゆる忌むべき心持ちを味わった! ……その上、私はあの人を失ったと思っている! 私はあの人を愛している! なぜ私は自分の心の中にあるものを皆移してしまうことが出来ないのだろう! けれどももし私が自分の中を通っているものがわかったならば、私は恐ろしくもだえているということがわかるはずであり、また、私にかみついて息の根を止めようとしているものもわかるはずである。しかし今私の言っていることは私の感じていることの100分の1にも過ぎないのである。
 私は片手で顔を隠し、片手で外とうを持って、その外とうで頭まで包み、それで真っ暗にして、散らかっていた私の考えをまとめようとしている。かわいそうな頭!
 とりわけ私を悩ますものが一つある。それは2、3年たつうちに私はそれを笑うようになり忘れてしまうだろうと思われることである。(1875年付記。──もう2年たつが、私はそれを笑いはしない。また忘れてもいない。)──こんな苦しみはすべて甚だしく子どもらしくまた虚飾に見えるようになるだろう。けれども、私はあなたに頼んでおきます、忘れてはいけません! あなたがこの文を読むときに振り返って見なさい。あなたはそのとき13だと思って見なさい。そうしてニースにいるのだと考えて見なさい。過ぎたことを今にして考えて見なさい! そのときに感じていたことを思い出して見なさい! ……そうすれば理解するはずです! ……そうすれば幸福になれるはずです!
by bashkirtseff | 2004-11-14 20:43 | 1873(14歳)
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