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1873.11.08(Sat)

 人は、いくら自分たちを愛する人にだって、あまり多く自分を見せてはならぬ。人と会ってあまり長く話してはならぬ。別れてから惜しまれるため、また幻影を残すために。こうすれば実際以上に良く美しく見えるものである。人間は過ぎ去ったものを惜しむから、またあなたに会いたがるであろう。けれどもその願いをすぐには満足させてやらないで、苦しませるがよい。ただしあまり苦しませてもいけない。あまりに多く値するものは、それを得るための困難で失われてしまう。もう少し良いものが期待されていたのであった。それからまた苦しませて、あなたを待たせるがよい。……こうしているうちにあなたは女王になれるであろう。
 私は熱病にかかったのではないかと思う。苦しいから、おしゃべりをして感情を紛らしている。誰にもわからないだろう。私は歌ったり、笑ったり、ふざけたりするが、快活に見せようとすればするほど心の中は苦しい。今日は口を開けることも出来ない。ほとんど何にも食べない。
 いくら書いても私の感じることは書けそうもない。私は愚かで、間抜けで、迫害された気持ちである。例えば公爵を結婚させるのは私からあの人を奪い去るようなものだ。実際、私の物を取られたような気がする。何という嫌な心持ちだろう! 私にはどう言ってこれを説明して良いかわからない。何を持ってきても足りないように思われる。私はつまらないことに対しても一番強い表現を用いているが、まじめに話そうと思うと何にも残っていないことがわかる。例えば……。いや、もうたくさんだ! 結論をしたり比較をしたりしようとすると、どこまで行っても切りがない。考えが入り乱れて混乱してしまう。
by bashkirtseff | 2004-11-09 21:21 | 1873(14歳)
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