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1873.10.25(Sat)

 昨夜人々は私の戸をたたいて、母様が悪いからと言って私を呼び起こした。私は眠ったまま降りて行ってみると、母様はひどく悪くなって、食堂に寝ていた。皆が心配そうな顔をして周りに立っていた。私はよっぽど悪いのだと分かった。母様は死ぬ前に一度私に会いたいとおっしゃった。私は恐ろしくなった。けれどもそんな様子を見せてはならなかった。それは恐ろしい神経の発作で、いつもよりずっとひどかった。家中の人が絶望していた。ドクトル・レベルクとドクトル・マカリを呼びにやった。薬などのために召し使いが八方へ出された。その晩の恐ろしさは書き記すことがとても出来ない。私はじっと窓際の腕いすにかけていた。世話をする人はたくさんあったし、それに私は看病などは下手であった。私はこれほど苦しい思いをしたことはなかった! 本当に! 苦しみ方は違っていたが、私には10月13日と同じ苦しみであった。
 時々母様はひどく苦しんだ。私は自分を包みきれなくなった。私の最初の考えは祈ることであった。医者が絶えず出たり、入ったりした。とうとう皆で母様を居間の寝台に寝かして、その周りに集まった。母様はちっとも良くならなかった。……その晩のことを思い出すと私は震える。医者は、こういう発作は危険だと言った。しかし神の恵みによって、今ではその危険も通り越した。私たちは皆静かにして、彼女の部屋に残っている。海が暴風雨の後で穏やかになって凍ったように見えるときのように私たちはそんな激しい焦慮が済むと、今まで何事があったのか分からないほど、じっと落ち着いてかけている。
by bashkirtseff | 2004-11-09 20:51 | 1873(14歳)
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