日付なし

 私は馬が飼えることになった! これまで私みたいな小娘で、競馬馬を持ったのを見た者があっただろうか! 私は熱心になれるだろう。……騎手にはどんな色がよかろうか? 鼠と虹色か? 否、緑とうすいばら色である。私に、馬が一つできた! 私はなんて幸福だろう! 私は何という人間なのだろう! なぜあふれ出ている自分の盃から、何物をも持っていない貧しい人へ、何か与えないのだろう? 母様は私にお金を下さった。私はその半分を貧しい人たちへあげよう。
 私は部屋の模様を替えた。中央にテーブルのない方が、部屋がずっときれいに見える。私はその中にいろいろながらくた物……インキつぼとか、ペンとか、不要の物を入れてある箱の中に長い間しまい込まれてあった二つの古い旅行用の燭台(しょくだい)とかを入れた。
 社交界は、つまり私の生活である。それを私は呼び、私を待つ。私はその方へ掛けだしたく思う。けれども私はまだ社交界に入るほど大きくなってはいない。早く私は大きくなればよいと思う。それは結婚するためではない。母様と叔母様が、その懶惰(らんだ)を振り落とすのを見たいためである。──ニースの社交界ではなく、ペテルブルグか、ロンドンか、パリの社交界である。私が自由に呼吸の出来るのはそこである。なぜならば、社交界の窮屈は私にはかえって楽だから。
 ポオルはいまだに趣味がない。彼は婦人の美についてなんにもわかっていない。私は彼がこういうのを聞いた。美人だって、あんなみっともない人が! ……私は彼の行儀と彼の趣味を作り上げてやらねばならぬ。実際、それほど私は彼に大した感化を及ぼさなかったのである。けれども私はいつかはそうしたいと思う。現在でも私は、いろいろなことについて、それとなく私自身の意見を彼に伝えようとしている。私は冗談の仮装の下に、もっとも厳粛な道徳の感情を彼に伝えている。それは楽しみでもあれば、良いことでもある。もし彼が結婚したら、彼は妻を愛さなければならぬ。そうして彼の妻だけを愛さなければならぬ。実際神と一致して、彼に正しい見解を与えたいと思う。
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by bashkirtseff | 2004-10-26 23:25 | 1873(14歳)
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