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パリ

 ついに私は自分でも知らずに求めていたものを求めだした。生きること、それはパリである! …パリ、それは生きることである。私は自分で何を望んでいるかを知らなかったから身を苦しめていた。今では私は自分の望んでいるものがわかっており、それを目の前に見る! ニースからパリへ来る、部屋を借りて装飾する、ニースのときのように馬を飼う、ロシアの大使の紹介で社交界のentrée(アントレ(加入権))を得る、これが、これが私の望むものである! 人は自分の望んでいるものがわかったときほど幸福なことはない! けれども私を苦しめる思いがある。それは私が醜いと信じていることだ! これは恐ろしいことだ!
 今日はリュ・ド・ロンドレ9番地の写真師ヴァレリに行って、G…の写真を見た。本当に美しい婦人である! けれども10年もたてば彼女は年取ってしまう。10年たてば私は大人になる。大きくなったら私はきれいになれるかも知れない。写真師は「うまく行ってれば今度はお気に召すのが出来ましょう」と言った。私たちはそれがどうなっているかを知らないで帰った。
 最後の散歩をしてとうとう私たちの去るときが来た。
 雷雨が頭の上で爆発して、稲妻がものすごかった。時々それは遠くの地面を打った、花火のような細い銀色の跡を空に残して。
by bashkirtseff | 2004-10-19 22:44 | 1873(14歳)
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