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日付なし

 昨夜私は恐ろしい夢を見た。私たちは知らぬ家にいて、私だったかあるいはほかの人だったか、それも誰だか覚えないが、急に窓の外を眺めた。見ると太陽がだんだんに大きくなって来て、天の半分を覆いそうになった。けれども熱も出さねば光も放たなかった。やがてそれが二つに分かれて、4分の1ほどの小さい方が見えなくなった。残りがまた二つに分かれて、分かれるたびに色が変わったり、光を発したりした。雲が現れて、太陽の半分を隠してしまった。「太陽が動かなくなった!」と皆が叫んだ。たとえばいつも太陽の回っているのを見ていたかなんぞのように。太陽はしばらく動かなくなって、色が薄れていたが、今度はやがて地球に変化が起こった。それも地球が震えだしたとかいうようなわけではなく、毎日の生活で考えられないことであるから説明のしようがない。私たちの理解出来ないことを言い表す言葉というものはないものである。さて太陽は二つの輪のように、一つが一つの中に入って、動き出した。すなわちまだ光っている方の太陽が時々同じように丸い雲で覆われた。皆が慌てだした。私は世界の終わりが来たのではないかと疑った。けれどもこれはすぐに止まるだろうと思われた。母様はうちにいらっしゃらなかったが、乗合馬車みたいなもので帰っていらした。けれども少しも怖がっていられなかった。何もかも変であった。その乗合馬車も常のとは違っていた。それから私は着物を始末しだした。私たちは皆品物を小さい箱の中にしまった。するとそのときまた始まりだした。いよいよ世界の終わりだ。そう思って、私は、なぜ神様は前もって私に知らせては下さらなかったのだろう、どうして私は今日まで生きていてこんな目を見なければならなかったのだろう、と疑った。皆が怖がっていた。私たちは母様と一緒に馬車に乗って、どことも知れぬ所へと帰って行った。
 この夢の意味は何であろう? 神様が何かの大事件を私に知らせて下さったのだろうか? それとも、ただの神経のせいだろう?
 マドモアゼル・C…は明日帰って行く。さすがにいくらか悲しい。一緒に住んでいれば犬と別れても悲しいものである。私たちの仲が良かったか悪かったかは別として、私の心は虫に食いばまれるように痛い。
by bashkirtseff | 2004-10-17 23:38 | 1873(14歳)
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