日付なし

 マダム・サヴェリエフは昨夜死んだ。私と母様とは彼女の家に行った。大勢の婦人たちが来ていた。その光景を私はなんと言ったらよかろう? 右を見ても悲しみ、天井を仰いでも悲しみ、床を伏しても悲しみ、ろうそくの一つ一つの炎の中にも悲しみ、空気そのものの中にも悲しみ。彼女の娘のマダム・パトンは発作が起こっていた。誰も彼も皆泣いていた。私は彼女の両手に接吻(せっぷん)して、私のそばに来て腰掛けてもらった。彼女に対して何か慰めの言葉を言いたいと思ったけれども、出来なかった。そうしてどんな慰めがあるだろう! ただ時のみだ! そうして私の思い付いたような慰めはことごとく愚かな、平凡なものばかりに思われた。私は一番気の毒な人は老人だと思う。老人は一人っきりになったのだ! 一人っきりに!! 一人っきりに!!! ああ! 私の神様、どうなるのでございましょう? 私はすべてのものが結末に到着すると思う。これは私の議論である。けれども、もし私たちのうちの誰かが死んだとしても、それは私にはあまり重大なことではないであろう。
 今日私は絵の先生のムッシュ・ビンサと議論をした。私はまじめに勉強したいから、初めからやり直して下さい、今しているようなことは時間をつぶすだけで、何にもならないから、この次の月曜からやり直して下さい、と言った。私がまじめに勉強しなかったとしても、それは先生のとがではなかった。先生は私がこれまで絵のけいこをして、目とか、口とか、そういったようなものを描く習慣が出来ていると考えていたのであった。ところで今先生に見せた絵が、実は私の生涯で最初の、自分の手で描いたものであった。
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by bashkirtseff | 2004-10-14 22:41 | 1873(14歳)
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