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1873.05.06

 母様は起きている。マドモアゼル・コリニョンも。この人は病気だったのである。雨のあとだけに美しい日であった。樹木は日に照らされてきれいに見えたので、どうしても勉強を続けることが出来なかった。私は庭へ出て噴水のそばにいすを置いた。噴水の周りには高い樹木が並んで、天と地を限って、よい展望であった。見る限りのものは、一つの小川と、こけで覆われた岩と、いろんな種類の樹木のみで、樹木の茂みは日光に輝いていた。それから柔らかい緑色の芝地、実際私はその上を転がり回りたくなった。これらのものが集まって新鮮な柔らかい緑色の美しい一種の緑陰をなしていたが、私はそれを想像させるように試みようとしても、できない。もし別荘(ヴィラ)や庭園がいつまでも変わらないならば、よく私があの人のことばかり考えていた場所へあの人を連れて来たいと思っている。昨日の夕方、私は神様にお祈りをして、どうか公爵と知り合いにならせて下さいとお願いしていると、涙が流れ出た。これまで三度神様は私の言うことに耳を貸して下さって、私のお祈りを聞き入れて下さった。初めの時は私は一組のクロケ(#マント?)をお願いした。すると叔母がジュネーブ(底本:「ジュネエヴ」)じゃら持ってきて下さった。その次の時は英語を覚えるように助力をお願いした。私はお祈りをしてひどく泣いた。私は想像力を刺激されて、なんだか部屋の隅に処女(マリア)の姿が見えて、私の望みをかなえて下さると約束したように思われた。私は今でもその時の顔を見ることが出来る。
by bashkirtseff | 2004-10-07 23:16 | 1873(14歳)
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