朝の8時に、空は曇って、黒い大地は雪でまだらに、ちょうどマダム・B…の顔のように粉を振りまかれていたが、私たちはすでに漁に出ていた。ミセルは一群れのレヴリエ〔猟犬の犬〕を連れてきた。私は野に出るとペリス〔毛裏外とう〕をも脱がないで馬に乗り、そのペリスをばひもで腰の周りに締め付けた。つなぎ合わされた3匹の犬が私にあてがわれた。
霜と雪と馬と犬の美しい首と、これらが喜びをもって私を満たした。私は限りなくうれしかった。 パシャは私と並んで馬に乗って甚だしく愉快そうにしていた。それが少しも彼に似合わしくないので私は悩まされた。けれども彼の気質の動揺は軽べつすべきものではなかった。 ──パシャ、私の邪魔になって仕様のない人があるのですが、(そんなにびっくりしないでいらっしゃい、伯母T…じゃないのよ)私はその人を荒立たないように片づけてしまいたいのです。 ──よろしい、僕にやらせて下さい。 ──本当に? ──やらせて見て下さい。 ──あなたの名誉にかけてね? きっと誰にも言いませんか? ──私の名誉にかけて、誰にも言いません。…… こんな話から青い人と私との間には一種の契約が出来た。 私たちは、彼の母親がいないときは、イギリス語で小声で話さねばならなかった。 パシャはどこまでも愉快そうにして行こうとした。それで私は両手を接吻するために与え、ヴィクトル・ユーゴー(底本:「ユウゴオ」)の詩集を読むために与えた。そうして兄のように彼を取り扱った。
by bashkirtseff
| 2006-03-03 21:35
| 1876(17歳)
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