家に帰ると夕飯が待っていた。伯父エチエンヌと、伯父アレクサンドルから送ってきた金が待っていた。私は夕飯を済まして、伯父を避けて、その金を隠した。
そのとき、真に不思議なことには、私はある大きな空虚を意識して、押し付けられたような気持ちを感じた。私は鏡をのぞいてみた。私の目はちょうどローマの最後の晩のようであった。心も頭も思い出でいっぱいになった。 私は目を閉じた。するとあの人に今一日だけで良いからいてくれるようにと言われた晩のことが思い出された。 ──じゃいますわ、私は小声で言った、ちょうど彼がそこにその人があるかなんぞのように。私の愛のために、私の約束した人のために、私の好きな人のために! 私はあなたを愛しています。私はあなたを愛していたいのです。あなたはそれに値しません。でもそんなことはどうだっていいわ。私はあなたを愛することが好きなのです。…… それから急に部屋の中を少し歩き回って、鏡の前で泣きだした。少しばかり涙を流すと私はいつもきれいに見える。 私は気まぐれな心から興奮していたが、疲れて落ち着いて来たので、一人で柔らかに笑いながらまた書き出した。 私は時々こんな風にして主人公を作ってみたり、小説を作ってみたり、戯曲を作ってみたりするのがその後からいつもそれが実際であったかなんぞのように思い出しては笑ったり泣いたりする。 私はペテルブルグは気に入った。しかしここではどうしても眠れない。もう明け方である。夜が実に短い。
by bashkirtseff
| 2005-10-16 13:01
| 1876(17歳)
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