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1882.12.14(Thu)

 けさ私たちは真実のバスティアンが田舎から持って帰った絵を見に行った。彼はせわしそうにその絵を直していた。私たちは友達のようにあいさつをした。彼は非常に親切で気取りのない人である。
 あるいは彼は完全ではないかも知れない? けれども非常に才能を持っている。実際彼は魅力に富んでいる。
 そうして気の毒な建築家は兄の光のために全く陰に投げ出されている。──ジュールは数枚の習作を持ち帰った。「村の宵」、1人の百姓が畑から帰ってくる途中で、出会った1人の女に話しかけている。女の家の窓には明かりが差して月が昇っている。夕暮れの効果が非常に著しく出て、すべてのものに行き渡っている。静けさを感じうる絵である。すべてのものが静まり返って、犬のほえる声が聞こえている。何という色だろう、何という詩想だろう、何という魅力だろう! ……
 ──ジュール・ブルトン(フランスの田園画家/1827-1906)──あなたの拳くらいの大きさの詩人と呼ばれる人──の行き方で、しかもそれよりずっと良い。
 それからまた1人の老人が働いている鍛冶場の絵がある。非常に小さいものであるが、ルーヴルにあるあの驚くべき小さい、黒い画布にも劣らないものである。これらのほかに風景や水やヴェニスやロンドル(ロンドン)の絵がある。それからイギリスの花売り娘と畑に出ている百姓の娘を描いた2枚の大きな絵がある。それは等身大であるが、私はびっくりした。彼の技量より劣っているように思われた。
 一目見てこの人の才能の移り気と力には驚いてしまう。この人の才能はその画風をある1つの行き方に限ることを潔しとせずして、あらゆる画風を巧妙に取り扱わせている。
 イギリスの子どもの方は2つの娘の絵よりもはるかに良く出来ている。Pas-mèche と題した去年の子どもの絵は実に傑作であった。
by bashkirtseff | 2010-06-10 08:01 | 1882(23歳)
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