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1881.02.03(Thu)

 私の目の前には今私の父と母の結婚前の肖像が掛かっている。私はそれを1つの証券として壁に掛けたのである。ゾラその他の有名な学者の説によれば、結果を理解するためには原因を知ることが必要である。私は若い健康な、褐色の髪の毛と目をして、幻惑するような皮膚をした、特別に美しい母から生まれた。私の父は青白い、健康の弱々しい人で、頑強な父親と病身な、若死にをした母親の子どもであって、姉妹は4人とも、生まれ落ちるとから多少の不具者であった。母親の祖父様と祖母様はよい体格をして、9人の子どもがあったが、皆健康で背が高く、中には例えば母様やエチエンヌのようなきれいな人もあった。
 私たちの問題となっている有名な子どもの弱い父親は丈夫になって、健康と若さで輝いていた母親は衰えて神経質になった。それは彼女が恐ろしい生活に耐え忍ばなければならなかったからである。
 私は一昨日「居酒屋」(ゾラの「ルーゴン・マッカール(底本:「ルウゴン・マツカアル」)」の中の1つの有名な小説)を読み終わった。それはほとんど私を病気にした。私はその本の真実に打たれて、その中に出て来る人たちと話しているような気持ちがあった。
 私はこれらの恐ろしいことがどこか下の方の私の周囲で進行しているのに、自分が生きたり食べたりしていることが腹立たしくなった。……人は誰でもこの本を読むべきである。それは人をより良くするであろうから。……しかし私は今ずっと平静になっている。ことに私1人では何事も出来ないから。誰が社会問題を無視する者があろうか?
 しかり! しかり! すべての人がそれを考えねばならぬ。ああ! しかり、それはすべての人から考えられねばならぬ。しかるに社会主義者は賤民か愚人のごとく取り扱われている。しかも社会主義者はしばしば理想国に赴かんとするのである。おお、混沌たるかな! 私には新聞の論文を書くことさえ出来ない!
by bashkirtseff | 2009-02-14 14:12 | 1881(22歳)
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