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1879.03.05(Wed)

 明日からまた仕事を始めよう。私は私にもう1年の月日を与えて、その1年間に今までよりもうんと勉強をしてみようと思う。失望したところで何の役に立つだろう? そうだ、私たちが心を取り直した時に言う言葉はこれである。……
 私の天使よ、失望はあなたに何物をも与えないでしょう。そうして別にすることは何にもないのだからすぐに仕事にかかりましょう。失望したければ、時間は後でいくらもありましょう。人生はより良き運命を望めば引きずり出されるものであるから、私たちは精出して働きましょう。それよりほかに道はない。私が絵を描こうか本を読もうかというのとは違う。あなたはこんな変な理屈から私が仕事をするようになったと思うかも知れません。しかしそれはもうごまかしなんかではない。ただ私の気になることは、いつか私は自分でこういうことを言うようになりはせぬかと思われることである。もしアトリエにばかり入り込まないで、良く自分のことを考えてみたなら、今ごろはもう? ……
 何でも好きなものが持てるかも知れない! 道はいろいろある。けれども私にはどうしたら良いか分からない。
 実際、恐ろしくなってしまう。私はいつも父をここへ連れてくることだって出来ると思っている。……そうです! 父は何をしていると思いますか? 父は私たちを迎えるために家を造っています。ありがとう! 私はそこへ行ったことがあって、良く知っている。私の母たちは何事も出来ない。私は自分が彼らをどうさせることも出来ないのを恥ずかしながら承認しなければならぬ。どうかさせうるとしたところで何にもならないであろうが。
 ちょうど私たちが尋ね求めることをやめた時が見いだす時である。どんな場合にも絵は私に少しも害を与えない。けれども私はまた少しも奨励を受けない! ……ちょうどその反対である。私の天使よ、あなたは知恵が足りないわけが分かったでしょう。
 ロマンスは! 歌は! おお! あなたは分かって下さるでしょう!!! 私は書いたり、読んだり、夢見たり、踏みとどまったりする! そうしていつも同じ沈黙と同じ孤独で、部屋はいつも同じ様子をしている。動かない家具が私を励ましたりあざけったりしているように思われる! みんな生きているのに、私はここで悪夢と戦っている!!!
 光栄? 何、光栄が何だ!
 私は結婚しよう。なぜこのことを伸ばす必要がある? 何を私は待っているのだろう? 絵をやめれば私の前には広い野原がある。それで……私はイタリアへ行って結婚しなければならぬ。……ロシアではない。ロシア人を買うのは恐ろしい。その上、ロシアでは、ことに田舎では、結婚は容易に出来るが、私はそんなばかではない。ペテルブルグでは? そうだ、父さえ同意してくれるなら一冬ぐらいは過ごしても良いと思っている。……
 そうしたら今年の冬はペテルブルグで過ごすことにしよう! 私は自分で自分の芸術を好いているとは思わない。それは手段であった。やめても良い。……真実か? おお! 私には分からない。……私は自分にこれからまた1年の月日を与えるか? そのつもりで部屋は借り入れてあるのだが?

To be or not to be?
〔生きていようか、それとも死のうか?〕

 1年では十分でない……。でも1年たってみたら進む価値があるかないかは分かるであろう。……でもイタリアへ行って、絵をやめたなら、私は若い婦人芸術家たちのうわさを聞くと腹立たしくなったり後悔したりすることだろう。またナープルとかペテルブルグとかへ行っていて、誰かの才能を褒めているような話を聞いたなら、私は耳を傾けて聞くことが出来るだろう? すべてこの根本となるものは私の美である。仮に私が成功しないと想像してみて下さいませんか? それは、満足することが必要なばかりでなく、ある与えられた1人の男をも満足させねばならぬから
 すぐにも私は絵を投げ出して、社交界に入ることもしくはプロムナードまたは劇場で光らすことの可能を承認する。……私は今歩き回っているが、やがて寝ようと思う。ペテルブルグのことを思うと本当に私はうれしくなる。けれども20ではまだそれほど年を取ったというわけでもなかろう。パリでは金持ちの夫を持てる望みはない。貧乏人ならイタリアの方がよっぽど便利である。
by bashkirtseff | 2008-12-12 09:14 | 1879(20歳)
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