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1884.08.22(Fri)

 もうだめだ、彼は宣告された!
 建築家とここで宵を過ごしたボオドが、母にそう言った。
 ボオドは彼の親友である。彼はアルゼリから長い手紙を彼によこしたことがある。
 それを私は読んだ。
 それにしても、もうだめだ。
 そんなことがあり得るだろうか?
 しかし私は、この恐ろしい知らせが私の上に働いた結果をまだ解剖してみることが出来ない。
 これは新しい1つの感動である。死を宣告された1人の男を見るということは。
# by bashkirtseff | 2012-05-19 18:31 | 1884(25歳)

1884.08.21(Thu)

 私は終日歩き回って、ただ5時から7時まで馬車の中で仕事したきりである。
 私は私の描いている一隅を写真に撮らせる。歩道の線を極めて正確にするために。
 それをしたのは今朝の7時であった。6時頃には建築家が来ていた。私たちは皆して、私と、ロザリと、建築家と、ココと、写真師とで出かけた。
 彼の弟がいてくれるのが役に立つからというわけではない。ずっと陽気になるからである。私は身の回りに小さな幕僚を従えているのが好きだ。
# by bashkirtseff | 2012-05-19 18:30 | 1884(25歳)

1884.08.19(Tue)

 私は外出してバスティアンの所へ行こうとしても、コルセットなしに麻の服を着る力もほとんどないまでに、弱ってしまった。彼の母は私たちを非難がましい目で迎える。3日! 3日も来ない! それが嫌だった。そうして、部屋に入るやいなや、こう叫びだしたのはエミルである。──どうなさったのです、もうおしまいなのですか! もう友情は見せてくださらないのですか? ──本当に、あなたは私を見捨てたのですか? 彼自身がそう言う。ああ! それはいけませんね。
 私の媚性は、ここで彼が、私たちにいくらたびたび来ても、決して、決して、来すぎるというようなことはないと言って優しく非難したり抗弁したりしたことを、私に繰り返させたいような気持ちにする。
# by bashkirtseff | 2012-05-19 18:29 | 1884(25歳)

1884.08.16(Sat)

 私が本当に辻馬車に乗って仕事をした今日が最初の日である。そうして私は帰ってくると背中に潅水法を行ったりなんかしたほどに疲れてしまった。
 しかし何という気持ちでしょう。建築家は今朝私の絵を据え付けた。彼の兄は良くなっていく。彼はボアへ行った。彼は安楽椅子にかけたまま階下へ下ろされたりまた上されたりした。それを語って聞かせたのは4時に乳を取りに来たフェリクスである。

 1週間この方、彼は山羊の乳を飲んでいる、私たちの山羊の乳を。家の婦人たちの喜びを思ってもみるが良い。しかしそれだけではない。彼は欲しくなるといつでも使いを取りによこすほどに、親しくしてくれる。うれしい。
 さて、要するに、私たちは彼を失おうとしている。彼は良くなりつつあるから。そうだ、私たちの楽しいときは終わりに近づいて来ているらしい。外出が出来る人の見舞いには行かれないであろう。
 でも何もそう難しく考えなくとも良い。
 彼はボアへ行った。しかし安楽椅子で運ばれて。次いで彼は伏せってしまった。
 これではまだ外出したとは言われない。
# by bashkirtseff | 2012-05-19 18:26 | 1884(25歳)

1884.08.12(Tue)

 要するに、私のお友達よ、詰まるところ、私は病人なのです。私はそういった気持ちに抵抗して闘っています。でも今朝は、とうとう降参しなければならないのかと本当に思い込みました。すなわち、私は寝込んでしまって、もう何にも出来なくなるのかと思いました。が直ぐと、少しばかり力がよみがえってきたので、私はさらに私の絵の材料を探し求めに出かけました。私の弱さと気扱いとは、私を真の世の中から遠ざけています。それを私は今ほどはっきりと見て取ったことは、これまで未だかつてなかった。
 すべてそうしたことが細々と痛ましくなるほどはっきりと私に見える。
 私は無知であり、また若くもあり、それに外国人でもあるが、最も偉大なる作家たちの悪くひねくれた文章や、最も有名な詩人たちのばかげた空想などを批評したりする。新聞紙に至っては、私は、反感を催さずには3行と読むことは出来ない。ただにそれが女中用のフランス語であるというばかりでなく、その思想までもが。……そこには真実なものがちっともない! すべてがおざなりであるか賃取仕事である!
 そのどこにも善意もなければ、誠実もない!
 そうして名誉ある人たちについて見ても、彼らは党派心に服従するため、嘘をつくか、でなかったら、彼らに考えられそうもないようなばかなことを言っている!
 それは嘔吐を催させる。
 バスティアンの家を出て、晩餐に戻ってきた。彼はまだ臥床してはいるけれども、平静な顔つきをして目は明るく輝いていた。彼は灰色の目をしている。その目のうっとりさせるような美しさには、もちろん卑俗な感じはない。
 あなたには私の言うことがよく分かりますか? 目、それは「ジャンヌ・ダルク」を見た目であって、──私たちはそれについて語っているのです。
 彼は十分に理解されていないことについて不平を漏らす。……私は彼に、ばかでない人間にはすべて彼は理解されていると言った。そうして彼の「ジャンヌ・ダルク」は、彼に面と向かっては到底言えないような様々な事柄を考えさせられる1つの作品であると。
# by bashkirtseff | 2012-05-19 18:23 | 1884(25歳)