<   2008年 07月 ( 7 )   > この月の画像一覧

1878.03.30(Sat)

 私は自分の席からモデルを見るたびに首を振り向けねばならぬことをば予想しなかった。この動作は私の神経に対しては我慢の出来ないものであって、私の絵はこの上もなくまずくなった。今度はきっと末席になるであろう。私は皆にそう話した。
 夜の級がおしまいになった。それで私は家で何かすることを考えねばならぬ。
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by bashkirtseff | 2008-07-26 22:24 | 1878(19歳)

1878.03.25(Mon)

 今日はコンクールの日である。クロアゼットに少し似ているような女が来た。
 私はかなり良い席をもらいだした。仕事の出来そうな気持ちである。と言って、遅くまで起きていて疲れても良いという意味ではない。
 ロベール・フルリが今夜来た。彼は確かに私に満足している。私に解剖学のことを聞いたから、もちろんちゅうちょしないで私は答えた。
 私のような人間であることは、忌むべきことである。けれども私は自分が善良であって、そうして誰をも愛していないことを神に感謝する。もし私が愛に落ちるようなことがあったら、私は憤慨して自殺してしまう。
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by bashkirtseff | 2008-07-26 22:24 | 1878(19歳)

1878.03.23(Sat)

 私はロベール・フルリの言った境界線を越してみせると約束した。
 私は約束を果たした。皆が私に対して非常に満足してくれた。私がこれほどの才能を持っているのは、勉強に値することであり、1、2カ月の間に非常な進歩をしたと言ってくれた。
 ──あなた方は今に学生たちの最良の組になるでしょう。ロベール・フルリがブレスロオの描いた絵を眺めながら付け加えた。ブレスロオはその席にいなかった。私の言っているのは、今ここにいない人たちのこともくるめて言っているのです。
 ──あなたは今にそねまれるようになるかも知れませんよ。ジュリアンが小声で私に言った。なぜと言うに、あなたがこの5カ月の間になさったほどの進歩をした人はこれまで1人もありませんでしたから。
 ──ジュリアン、とロベール・フルリは皆に聞こえるように言った。私はこの驚くべき天才を持っているマドモアゼルに最高の賛辞を与えているところです。
 ジュリアンは大きな体をしているくせに、ふらふらして漂っているように見えた。何となれば、ロベール・フルリは報酬をもらわないで、友情から直しに来るのであるから。それでジュリアンは学生が先生に興味を持っている時は、幸福になるのである。
 ジュリアンは裸体習作が直されている時に、(彼はそれを直さないことになっていた)入って来た。けれども私は彼が月曜日以来私の習作に興味を持って注意していることに気がついていた。
 要するに、私はいつもの謙遜(けんそん)な心で、こんないい気になったような出来事には、もうこれ以上かかずらわっていないことにしようと思う。けれども、ただある人の嫉妬心が、またほかの人の嫉妬心や不安が、100分の50も増加するのに気がつく。
 ほかの人たちは、絵の具で描きたいと思うとすぐ始める。けれども私はロベール・フルリの特別の注意の下に私自らを置いて、彼の指図のないことは何もしないことにしている。今日私は絵筆の使い方に慣れるために、ごく易しいものを何か静物から絶えず描くようにと言われた。これが絵の具のことを言われた2度目である。
 来週かもしくば再来週私は彼のために8号の画布に私の持っている頭蓋骨のそばに書物か何かを置いて絵の具で描いてみようと思う。
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by bashkirtseff | 2008-07-26 22:22 | 1878(19歳)

1878.03.16(Sat)

 私はミリトンへ展覧会を見に行った。私は自分の職業が本当に好きである。そうしていつもこのことを新規に自分に言い聞かせては満足している。
 ロベール・フルリが今朝私にこう言った。
 ──このごろあなたにはどうしても通り越せない境界線が出来ています。それはいかんことです。あなたの才能を持ってすれば、決して易しいことの前にとどまったりしてはなりません。そうしないで進んで行ってこそ、困難にも打ち勝てるのです。
 そうだ。私はそのことを良く知っている! 家に帰ると肖像にかかる。そうすると家のうるさいことがたくさん起こってくる。……けれどもそんなことはもうどうだって良い。C…は私に何物をももたらさないであろう。しかし絵はそうではない。
 月曜日には! ロベール・フルリに言われた境界線を飛び越して見せよう! 人はぜひとも成功しなければならぬ、また成功するだろう、と信じている必要がある。
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by bashkirtseff | 2008-07-05 15:42 | 1878(19歳)

1878.03.13(Wed)

 ジュリアンは冗談半分に私のストア主義を褒めた。エスパアニュの娘は冷淡に仕事をするような人は決して普通以上のことは出来ないと言った。ところがエスパアニュの娘はどうかと言うに、彼女は4年間昼も夜も勉強していたほどの熱心を持っていながら、首1つまとめることにも、裸体の習作を1つ作ることにも成功しない。もっとも絵の具を堅苦しく塗りたくる(#底本:「ぬたくる」)ことだけは出来るけれども。
 私が男なら、あんな女と結婚しようとは思わない。あの女の作り出すものは皆統一がない。
 私の叔父たちはC…のごとき人と私との間に存在しているような友情というものをまるで知らないから、彼が温情を持って私をそそのかしていると考えている。彼らに理解がないのは分かりきったことである。なぜと言うに、C…なぞに愛を与えるのは、アヴィニョンの橋の上に自分で1つの家を造るようなものであるから。
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by bashkirtseff | 2008-07-05 15:31 | 1878(19歳)

1878.03.12(Tue)

 いなくなったピンチオのことを思うと胸が痛くなる。
 私は実際彼をかわいがっていた。彼の失踪はワリツキの死と同じ程度に私の心を動かす。ことにあの犬は人の手に渡っていると思ったり、私を見忘れていると思ったり、あの黒い目と鼻をした小さい顔がまたと見られないのかと思ったりすると、なおさら胸がかきむしられるようだ。私は泣きそうになる。
 おお、いやだ! ……私はいっそC…にでも、または誰でも傷ついたり、病気をしたり、零落したりしている人に会った方がいい。私をあれほど愛していた犬を2度と見られないくらいならば。私は犬がいなくなったので、真実悲しんでいる。その他のことはわら一筋ほども気には留めていない。
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by bashkirtseff | 2008-07-05 15:29 | 1878(19歳)

1878.03.04(Mon)

 私の犬が土曜日から見えなくなった。帰ってくれば良いがと私は念じている。
 私のかわいそうな犬、もし私の心の中に少しでもものを感じるだけの余裕があるならば、私は犬のことで、悲しくなるのが当然である。
 私のかわいそうな、いなくなった犬!
 もし私が自分が望んで、手に入れないもののために、死ぬことにでもなったら、どうだろう!
 今私は自分は一個の誤解された人間だと信じている。
 これは人の考える中での一番忌まわしいことである。
 10万の虚偽、しかも皆同様に正当な理由を持っていない。私はあらゆるものに自分をたたき付けて、血まみれになっている。
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by bashkirtseff | 2008-07-05 15:28 | 1878(19歳)