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1877.08.06(Mon)

 あなたは、私にはロシアのことは心配にならないと思いますか?! 自分の国が危険になっているのに、それを忘れるほど破廉恥な軽蔑すべきことがあるでしょうか? ……あなたはウサギとカメの競走の話がロシアとトルコにも適用されるのに、私が苦痛にならないと思いますか? 私がハトのことや、アメリカの婦人たちのことを話すからといって、それで私は、私たちの戦争のために頭が変になっていると言えるでしょうか?
 あなたは、もし私の祈りが聞き入れられたとしたならば、あの殺された10万人のロシア人の生命が助かったとでも思うのですか?
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by bashkirtseff | 2007-01-20 07:31 | 1877(18歳)

1877.08.05(Sun)

 人はパンがない時には菓子のことなどは言わないものである。だから私も今では芸術状の望みを言ったりすることを恥じている。私はもう少し良い仕事が出来るように、ああしたいとかこうしたいとか、イタリアに行って勉強したいとか、そんなことはもう言わないつもりである。こう言うだけでも私にはつらい!
 たとえ私の望みはことごとくかなえられても、私は以前のように満足することはもうないだろう。
 自信を失うことは何物を持ってしても回復の道がない。これは、そのほかの取り返しのつかないことと同様に、私にとっては慰められようのない悲しみである。
 私は絶望し、悲しみ、何物にも何人にも心を動かされなくなった。私の顔はやつれ、それがために醜くなった。私はもはや話も出来なくなった。友達は私を見るとびっくりして、すぐに去ってしまう。それで自分でも愉快にしようと努めては見るが、その結果は妙に調子の外れたばかげたことをするようになる。
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by bashkirtseff | 2007-01-20 07:29 | 1877(18歳)

1877.08.01(Wed)

 「高慢な性質と愛すべき性質とには2つの感情が共通している。──他人の意見に極端に動かされやすいことと、その意見が正しくない時に極端に悲しくなることと。」
 誠にうまく言ったものであるが、誰が言ったのだったか? 私は思い出さない。しかし私はちょうど1年前にこの文句を引用したことがあった。あなた方も私のことを考える時には時々これを思い出して下さるように願います。
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by bashkirtseff | 2007-01-20 07:27 | 1877(18歳)

1877.07.30(Mon)

 多くの若い娘たちは皆感想を書き留めておくそうだ。「ヴィ、パリジェンヌ」がかかりばかにした調子でそんなことを言っている。私はそんな種類の中性的な、しっと深い無知な人間になって、物事にさもしい心を起こしたりしたくないと真実そう望んでいる。
 フォオヴルは私の旅行をアンジアン(ベルギーの小都市、リュッセルの西南約20マイル)までにとどめた。多分ドイツへ私をやるつもりだろう。ドイツへ行けば何もかも食い違ってしまうだろう。ワリツキは頭の良い男で、病気のことは何でも知っている。私は彼がゾーデン(プルスのヘッセ湖畔の高地/底本:「ゾオデン」)を勧めたのが間違いであれば良かったと望んでいた。しかるに今フォオヴルまでが彼に同意するのである。
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by bashkirtseff | 2007-01-18 20:58 | 1877(18歳)

1877.07.26(Thu)

 ほとんど終日絵を描いたり、目を休めるためにマンドリン(底本:「マンドリイヌ」)を弾いたり、それからまた絵を描いたり、またピアノを弾いたりした。世界には芸術に比較さるべき物は何にもない。どの程度の人にとっても、初歩の人にとっても、最高の域に達した人にとっても、それは幸福の源泉である。
 製作にかかっていると何もかも忘れてしまう。輪郭を見ても影を見ても敬意と優しみの心がわいてくる。自分が創造者になって、自分ながら偉大に感じられる。
 私は視力を悪くしてはならぬと思って、この3日間、日が暮れて読書することをよしている。近ごろは馬車から歩道までくらいの距離でも目がかすんで見えにくくなった。心配である。もし、声が出なくなった上に、絵と読書をよさねばならぬことになったらどうしよう! そうなったら、もう私は泣き言は言えない。なぜと言うに、私がほかにどんな苦しみを受けても人を責めるべき限りのものでもないから。また、それは神のおぼしめしだと考えられるから。
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by bashkirtseff | 2007-01-18 20:53 | 1877(18歳)

1877.07.18(Wed)

 この単なる言葉、イタリア! はほかのいかなる言葉を聞くにも増して、またいかなる人と会うにも増して私の心を感動させる。
 おお! いつになったら私はそこへ行けるだろう!
 私は虚飾からおお! とかああ! とか書くのだと思われては本当にどうしてよいか分からなくなる。
 自分ではなぜそう思われたりするだろうということは分からないが、しかし実際にそんな風に思われそうな気がする。だから私は誠に愚かなまた不愉快なことではあるかも知れないが、自分の言うことは皆真実であるとあくまでも断言する。
 ご覧の通り私はこれから文体を変えて、ごく単純な書き方をしようと思うが、私の今までの誇張した物の言い方と比較してみると、誰も私の言おうと思っていることが分からなくなりはしないかと心配している。
 聞いて下さい。私はナープルを去って以来、つまりロシアの旅に出て以来、常に自分を直そうと努めています。あるいはいくらか改善されたかと自分では思っています。
 私は何もかも極めて自然に話そうと思っています。もし形容の言葉が出来ても飾り立てるために使ったのだとは思わないで下さい。おお、否、それはただ出来る限り完全に私の考えの混乱を表そうとするからなのです。
 私は人を泣かせるような物が書けないのでひどく腹立たしく思っている。私は自分の感じる通りに人をも感じさせたい。私は泣くから、私は泣くと書く。それだけのことでは私は足りない。何もかも書きたい。……つまり、人をも泣かせたいのである!
 今にそうなるであろう。しかしそうなるだけのことでは済まないだろう。けれどもそれを探し求めるのは無益なことである。
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by bashkirtseff | 2007-01-18 20:52 | 1877(18歳)

1877.07.17(Tue)

 今日は終日古代の芸術的な縫い取りや服装の真に驚くべきものを見て暮らした。それは騎士的な牧歌的な生活の詩とも見るべきものであって、私の想像だにしなかった豪奢(ごうしゃ)を語る物ばかりであった。もちろん demi-monde(娼婦(しょうふ)/デミモンド)の豪奢などではなく、良き社会の豪奢であるが。
 ああ! イタリア! ……私はひと月ずつ1年に2度自分の着物のことで費やすことはあるとしてもそれは後で面倒を見たくないからである。人が一番大切な注意を着物のことにささげるとは何という愚かなことだろう! 私の場合で言うと、着物から服装に移り、服装から歴史に移っていく。
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by bashkirtseff | 2007-01-18 20:50 | 1877(18歳)

1877.07.15(Sun)

 私は死にたいほどに疲れている。何物も私を過たせるものはなく、何物も私に興味を起こさせるものはない。私は何物をも欲しなければ、また何物をも望まない。否、このような状態に陥っていることを恥ずかしくさえ思いたくない。つまり、草木のように、何にもしないで、何にも考えないで、それを情けないとも思われないでいたいのである。
 大尉B…が宵の口に訪ねてきて、皆して一緒に話をした。けれども私はマダム・ド・スタエルがフランス語を巧みに使いこなす外国人のことについて書いた物を読んで以来、会話に努力することがつまらなくなってしまった。彼女の説に従えば、フランス語の天才に出会ったなら穴の中へでも隠れなければならぬと言うのである。
 読書、絵画、音楽、それから倦怠(アンニュイ)、倦怠、倦怠! 人は仕事のほかに、娯楽と人生の興味が必要である。私は倦怠している。倦怠しているからといって、それは私が結婚していないからではない。否、あなたは私のことを良く思って下さるでしょうから、そんなことは想像しなさならないでしょう。私が倦怠しているのは、何一つうまくいかないからであり、それに倦怠しているからである!
 パリは私を殺しそうだ! それは一つのカフェであり、良く経営された一つのオテルであり、また一つの商品陳列所(バザール)である。しかし今に冬になったらばオペラとボア(ボア・ド・ブローニュ(底本:「プウロンニュ」))と、研究とで、私はもっとパリに慣れてくるかも知れない。
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by bashkirtseff | 2007-01-18 20:48 | 1877(18歳)

1877.07.07(Sat)──パリ

 私は自分で大っぴらに言えるが、近ごろは自分ながらずっと理知的になって、事物を相当に明るい光で見るようになり、多くの幻影や多くの困難に打ち勝ちうるようになった。
 真の知恵はただ自分の直接の経験によってのみ得られるものである。
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by bashkirtseff | 2007-01-18 20:45 | 1877(18歳)

1877.06.11(Mon)

 昨夜皆がトランプをして遊んでいる時私は風にはためく2本のろうそくの明かりでざっと写生をしておいて、けさ初めて画布に下絵を描いた。
 私は一生懸命になって、4人の人が別々の姿勢を取っているところを描き、手先や腕の位置や顔つきの表情などを写し分けてみようと努めた。これまではただ首だけを描いていたのであるが、今画布の上にそれを花のように振りまいてみるのはうれしかった。
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by bashkirtseff | 2007-01-18 20:44 | 1877(18歳)