1878.11.13(Wed)

 ロベール・フルリが今夜アトリエに来た。私に長い講釈をして下すった後で言った励ましの言葉をいちいち繰り返すのは用のないことであろう。彼らの言うことがすべて真実だとすれば、あなたはこの日記をお読みになるころは、私についてどんなことが考えられていたかがお分かりになるだろうと思う。
 しかし、とにかく、人が真剣に取り扱われているのは、いつでも気持ちの良いものである。私はよほどどうかしている。自分というものに絶大の望みをかけていて、ほかの人に同じことを言われると、自分でもそういう可能を疑ったことがなかったような気がして、歓喜の極頂に達する。例えば女の中で1番美しい女に愛されていると思い込んでいる怪物のように、驚愕と光輝に満たされている。
 ロベール・フルリはすぐれた教師で、1歩1歩人を導いていくから、導かれる方でも進歩のあとが分かるのである。
 今夜彼は私を、やっと音階を覚えて初めて何か弾いてみた生徒か何ぞの様に取り扱った。彼はとばりの端を上げて遠い地平線を私に見せてくれた。今夜は私の仕事の上に1時期を画する晩であった。
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by bashkirtseff | 2008-12-01 12:25 | 1878(19歳)
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