1878.10.12(Sat)

 私の裸体習作は実に、実に、実に良いと言われた。
 ──ああ! あなたは本当に天才があります。やればどんなことでも出来ます。
 私は賛辞に慣れてしまった。(これはただ形式のために言うのであるが。)R…の言ったことが真実だという証拠は、皆が私をねたんでいるのでも分かる。そんなはずはないとは思いながらも、それでも私は苦しい。彼らがそんなことを私に言う時には、ことにそれを言うのがR…の様なまじめな人である場合には、その中に何かが含まれているに相違ない。
 ジュリアンはどうかと言うに、彼はもし私が私の評判を皆聞いたらば気が変になるほど喜ぶだろうと付け足して言った。
 ──あなたは今に得意で酔っておしまいになりますわ。女中はそう言った。
 私はいつもこの日記を読む人が、私は金持ちだから人にへつらわれているのだと思われはしないかと心配している。それはどうでも良い。私はほかの人たちと同じ金しか払いはしない。ほかの人たちには勢力のある友達もあれば、教師をも良く知っているから、その上あなたがこの日記を読むころには私の成績はすでに疑われなくなっているだろうから。ああ、少なくとも私はそのくらいの報酬は得なければならぬ。
 人がその成績で尊敬されているのを見ることは喜ばしいものである。
 R…はカロリュスのまねを始めだした。彼は行ったり来たりする。(彼は世界博覧会で大賞牌を得た人である。)彼は絵を直したり、シガレットをふかしたり、ひじ掛けいすにかけたりして、話し込む。それを気に留めない。彼は私を生徒としてかわいがってくれてることを、私は良く知っている。ジュリアンもそうである。
 この間スウェーデンの娘が私にある忠告を与えた。するとジュリアンは私を自分の部屋に呼んで、私は持って生まれたままの傾向で描いて行くが良い、初めは弱い絵になるかも知れないが、それでも私自らの絵である、「もしあなたが人の言う通りになるようだったら、どうなってしまっても私は責任を負いません」と言った。
 彼は私に彫塑をやってみるように希望している。そうしてデュボア〔有名な彫刻家/このとき49歳/1829-1905〕に見てもらおうと言った。
 今日私はパリに来て初めて馬車で遠乗りをした。着物を着替えて、髪を上げて、急がないからゆっくり時間をかけて小ぎれいに身じまいをした。そうしてヂナは母と家に居残ったから、私は上座に腰掛けた。馬の方へ背中を向けて乗るのは、愉快ではなくて苦痛である。これから土曜日ごとに私はこうしようと思う。あなたもいらっしゃるか知れないがボアへ行ったりするのは愚である。今日私は久しぶりに私自らに戻った。私は成功した。皆私を見た。
 私は喪服を着て、羽根のついたフェルト帽をかぶっていた。全体の効果が上品で気が利いていて単純であった。
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by bashkirtseff | 2008-11-28 09:43 | 1878(19歳)
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