1878.10.07(Mon)

 愚かな人たちは私が第2のバルザックになりたいのだと思うかも知れない。私はそんなことは考えていない。しかしあなたにはなぜバルザックが偉いかお分かりですか? それは彼が何でも自分の思うことを、恐れも気取りもなく、極めて自然に書いているからであります。誰でも知識のある人ならどんな風にして書いたらば良いかということを彼が知っていたくらいには知っているはずである。しかるに彼と同じように書けた人がないのはどういうわけであろうか? すべての人に与えられた同じ能力でも現れては全く別の結果を生じている。
 否、ほとんどすべての人が必ずしも同じことを考えたとは思えない。けれどもバルザックを読むと、その真実、その自然が、誰でも自分の頭の中にもその通りの考えが以前からあったように感ぜしめられる。
 しかし私のことを言うと、これは100度もあったことであるが、あることを話したり考えたりしているうちに、自分の頭の中にあったような考え、自分の頭の混沌から引き離すことの出来ないような考えで恐ろしく悩まされることがあった。私には今1つ言うことがある。それは私が何か正しい聡明なことを言っていながらも、人に理解されそうもないと思われることである。
 おそらくは実際人は私が理解してもらいたいと思うようには理解してくれないものであろう。
 おやすみなさい、皆さん!
 ロベール・フルリとジュリアンは私の上に大きな希望を築き上げている。例えば、私を大懸賞でも取りそうな馬か何ぞの様に大事にしている。ジュリアンは褒めると私が付け上がってくるだろうということをいつも手まねでほのめかしてばかりいるけれども、反対に私は褒められると励みになるということを彼に断っておいた。それは事実である。
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by bashkirtseff | 2008-11-27 09:59 | 1878(19歳)
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