1878.08.07(Wed)

 私の神様、私をローマへ行かれるようにして下さい。私の神様、私がどんなにそれを望ましく思っているかを、あなたに知って頂きたいのです! 私の神様、どうかあなたの駄目な子どもにお恵みを与えて下さい! ローマへ行けるようにして下さい。……それは言うまでもなく不可能なことでしょう。……あんまり幸福すぎますから! ……
 こんなことを考えさせるのはリウィウスではない。私はもう幾日も昔の友達に構わないでいるのだから。
 それはリウィウスではなくて、カンパーニュ〔ローマ近郊の平原〕、ピアッツァ・デル・ポポロ、ピンチオ、円屋根の入り日に染まる景色の思い出からである。……
 それからあの神聖な賛美すべき朝明けの景色。太陽が昇って、すべてのものの形や色が次第にはっきりとなってくる。……ほかの場所は何という空虚を感ぜしめることだろう! ……あの魅力に満ちた神秘の都の目覚める時のことを思い出すと、何という神聖な感情がわき起こるだろう! ……とても言葉には表せないこの感情をローマに吹き込まれたのは私だけではあるまい。……信じられないほどの過去と神聖な現在との結びつきとでも言おうか、……どう言ったらばよいか私には分からないが、……そんな感情をローマに吹き込まれたのは私だけではあるまい。……もし私に愛する人があるとすれば、それはローマのことであって、太陽があの神聖な円屋根の向こう側に落ち行く景色を眺めながら私は愛を語るだろうと思う。……
 もし私が何かの限りなき不幸に打たれることがあるとすれば、私はローマに行ってあの円屋根を仰いで泣きながら祈るであろう。またもし私が人間のうちで一番幸福な人になれるとすれば、それもローマへ行ってからのことであろう。……
 パリに住みたいと思うのは何という平凡なブルジョアの考えだろう。……けれどもパリはローマに次いで世界に2つとない都である!
[PR]
by bashkirtseff | 2008-11-21 10:39 | 1878(19歳)
<< 1878.08.17(Sat)... 日付なし >>