1878.08.02(Fri)

 近ごろはニースのことばかり思い出す。……まだ15であった。あのころ私はどんなに美しかっただろう! 体も足も手もあるいは完成していなかったかも知れない。けれども顔には魅力があった。……それも今ではもうなくなってしまった。……ローマから帰った時、伯爵ロオランチなぞはほとんど私に食ってかかった。……
 ──あなたのお顔は変わりましたね。彼は私に言った。目鼻立ちや顔色は元の通りだけれども、何だか変わりましたね。……あなたはもうこの写真の顔にはなれそうもありませんね。
 彼の言ったのは私が両ひじをテーブルの上に持たせかけて、ほほを両手で支えている写真のことであった。──例えば、あなたは部屋に入ってきて、首を両手に支えて、その目で未来の方を眺めながら、半ば恐怖しているような調子で、「これが人生というものでしょうか?」とでも言っているように見えます。
 私の顔は15歳のころには、それ以前にもそれ以後にも見られないほどのあどけなさがあった。そうしてその表情は世界中でまたとないほど魅力に富むものであった。
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by bashkirtseff | 2008-11-21 10:19 | 1878(19歳)
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