1877.11.14(Wed)

 私は今日書物と石こう模型を買いにレコオル・ド・メドゥサン〔医学校〕の近所まで行った。ヴァッセの店へ行ったのである。ヴァッセでは、あなたも知っている通り、各種の解剖模型や頭蓋骨(ずがいこつ)などを売っている。さて私はそこで友達から多数の利益を受けた。彼らは私のことを美術学校の解剖教授をしているムッシュ・マティアス・デュヴァル(底本:「マチア・ヂュヴァル」)、その他の人たちに話して、その内のある人たちは私のところへ教えに来ることになった。
 私は面白かった。往来は学校から出てくる学生で一杯になっていた。何という狭い往来であろう。楽器店やその種類のあらゆる店が並んでいて。ああ! いやになっちまう。私はカルチェ・ラタンの魅力、と言って良いだろうが、それを今初めて理解することが出来た。
 私は今私のそばには封筒よりほかに女らしいものを何にも持っていない。その封筒は甚だしく女性的である。その他の物は全く別問題である。こういうのは私だけではない。すべての女が皆私と同じだと私には思われる。
 私にカルチェ・ラタンの話をしてくださいな、まあよかったわ! 私がパリと妥協したように感じられるのはカルチェ・ラタンだけである。例えばイタリアへでも行ったように思われて、もっとも、言うまでもなく、イタリアは全く別種の趣を持っているけれども。
 社交界の人たち、またブルジョアとして知られている人たちは、決して私を理解しないであろう。私が話しかけているのは、彼らに対してではなく、私たちの仲間の人たちに対してである。
 不幸な娘たち、私の言うことを聞いて下さい!
 例えば、私の母などはあんなものの並んでいる店に私が入っていくと恐怖を感じています。おお、あんな物とは何であるか? それは「裸体の百姓たち」である。ブルジョアよ! 彼らは今に私が美しい絵を描いたなら、詩が見られることだろう、花が見られることだろう、果実が見られることだろうと期待するだろう。彼らは決して汚い物を見ようとは思わないであろう。
 私はただ目的のみを見る。私は目標を望んでまっすぐに進む。
 私は書物屋やその他の店に行くと、私の気取らぬ服装のために、ブレスロオまたはその階級の人と間違えられることがあって面白い。彼らは私を見ても以前とは全く異なった、愛想良い、なれなれしい態度で応対する。
 ある朝、私はロザリと馬車に乗ってアトリエに行った。御者に私は20フランを1枚やった。
 ──おお! お嬢さん、お釣りがありませんがねえ。
 実に面白かった!
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by bashkirtseff | 2008-02-07 22:38 | 1877(18歳)
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