1877.11.08(Wed)

 アトリエが閉じられないうちに午後私をそこから引き離しうるものがただ一つある。それはヴェルサイユである。うちの人たちは入場券が手に入るとすぐショコラを私のところへよこした。それで私は着替えに帰った。
 階段で私はジュリアンに出会った。彼は私がそんなに早く帰っていくのを見て驚いた。私は訳を話して、ヴェルサイユよりほかのものは私をアトリエから引き離しうるものはないということを言った。彼は、ヴェルサイユに行くのは、自分の好き勝手なことをして遊んでいるより、いくら良いかしれないと言った。
 ──私は好き勝手なことはここだけでしているのです、ムッシュ。
 ──それは良いことです! 今に2カ月もたったら、どんなに面白くなるかしれませんよ。
 ──いいえ、私は非常に偉くなりたいのです。道楽でデッサンしているのじゃありません。
 ──そうあって欲しいものです! 金の延べ棒を銅の延べ棒のように取り扱うのは罪悪です。私は断言致しますが、あなたの進み方で行ったならば、一年半とたたないうちに本当の才能が現れるようになります!
 ──おお!
 ──繰り返して言いますが、本当の才能がですよ!
 ──まあお気をつけください、ムッシュ、私はそうまでおっしゃられると気が違いそうです。
 ──私は本当のことを言っているのです。あなたも今に自分でお分かりになると思いますよ。この冬の終わりごろには本当に良い絵が描けるようになります。それから6カ月ほど色のことを教えてあげます。そうすると何でもあなたの描きたいものが描けるようになるでしょう!
 恵み深き天よ! 私は馬車で帰りながらもうれしくて笑ったり、泣いたりして、そうして私の絵が5千フランで売れるようなことを想像していた。
 停車場に女だけでいたりするのは……ついに私たちは特別席の汚い席に着いた。雨が降っていた。
 議会で選挙の有効ということが論じられていた。その有効ということがある事件を引き起こして、かけていることが面白くなってきた。
 私は議会へはたびたび行くことは出来ない。そうするとアトリエから離れねばならぬから。あなたに興味が出ると何度も行くでしょう。そうすると毎日毎日が同じ書物の新しいページになります。私は政治のことに非常に興味が出来てくると、眠れないようにあるだろうと思われる。……けれども私の政治というのは、リュ・ヴィヴィエンヌにあって、私にとっては議会に達する途上にあるから、現代からは非常に懸け離れた流行とも言えるのである。1年半、そのくらいは何でもない!
 非常な幸福が私を恐ろしくさせる。
 1年半で肖像画は描けるようになる。けれども風景は? ……あるいは2年3年かかるといわれるかも知れぬ。……私たちは見ていましょう。
 私は美しい顔をしていた。けれども8時になると非常に疲れてきた。それで少なくとも1時間くらいは絵を描かずにはいられなかった。
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by bashkirtseff | 2008-01-04 16:41 | 1877(18歳)
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