日付なし

 私はついでに成功の話をおしまいまでしてしまおう。
 ──どうです、マドモアゼル? ジュリアンが夕方私の前に立って両手を組み合わせながら言った。
 私は何だか怖いような気持ちになって、顔を赤らめ、何のことだかを聞き返した。
 ──いや、感心ですな。あなたは土曜日も夜まで勉強なさる。ほかの人はみんな休んでいるのに。
 ──ええ、そうですわ! ムッシュ、私はほかにすることがないのですもの。何かしないではいられないのですもの。
 ──結構です。あなたはムッシュ・ロベール・フルリが大層感心していたことを知っていますか?
 ──ええ、あの方がご自分でそうおっしゃいました。
 ──気の毒なロベール・フルリ、彼はまだどうも良くないのです。
 そう言って先生は私たちの間に腰掛けて話しだした。それはめったにないことなので、……私たちはその厚意をどのくらいに値踏みすればよいかということを知っていた。
 ロベール・フルリは帰る前に私たちの善良なジュリアンと話をしていた。それで私はまだ何か聞きたいと思った。もちろん褒められたことが聞きたかったのである。
 それで私は先生のところへ行った。そのとき彼は別室でけいこを始めているある小さいブロンドの娘の絵を直して来ていた。
 ──ムッシュ・ジュリアン、……どうぞ私にムッシュ・ロベール・フルリのおっしゃったことを話してください。……私は何にも出来ないとは自分でも良く知っております。けれどもあの方は……私の始め方について批評していらしたでしょう。それでもし……
 ──もしそれを聞いたら、マドモアゼル、あなたは赤い顔をしなければなりませんよ。
 ──大丈夫ですわ、ムッシュ、どんなことをおっしゃっても私は……
 ──ロベール・フルリはあなたが利巧な描き方をすると言っていました。それで……
 ──あの方は私がこれまで描いたことがなかったと言っても、信じてくださらないのです。
 ──そうです。私と話している時でもまだそう思っていたようです。だから私はあなたが天使長(アルカンフゼロ)首を描きだした時に、2度も描き直させたのだと言ってやりました。覚えておいででしょう、あなたはまるで何にも描き方を知らない人のようでしたね。
 ──ええ、ムッシュ。
 そう言って私たちは笑った。ああ! 実に愉快である!
 驚きとか、励ましとか、不信とかと共に、そういった愉快なことも皆終わって、また仕事が始まるのである。
 マダム・D…が私たちのところで食事をした。私は静かにして、口を利かないで、ほとんど愛想良いところがなかった。私は今絵のことよりほかに何にも考えを持っていない。
 これを書きながら私は中止した。これからしようと思う仕事のことや、時間のことや、忍耐のことや、困難のことなどを考えて。……
 偉大なる画家になることは、口で言うほど容易なことではない。仮に天才があるとしても、その上にまだ無慈悲な、機械的な労力が必要である。……すると、一つの声がうちから私にささやく。お前は時間とか困難とかいう物はそれほどに感じないだろう、お前は不意に成功に達するだろう!
 私はその声を信じる。その声はこれまで私を欺いたことがなかったから。そうしてその声はいつも私に不幸を警告してくれたから、今度も私を欺くことはないだろうと思われる。私はそれを聞きながら、それを信じることが正当だと感じた。
 私は Prix de Rome 〔ローマ賞〕が取れるだろう!
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by bashkirtseff | 2007-10-14 20:57 | 1877(18歳)
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