1877.07.26(Thu)

 ほとんど終日絵を描いたり、目を休めるためにマンドリン(底本:「マンドリイヌ」)を弾いたり、それからまた絵を描いたり、またピアノを弾いたりした。世界には芸術に比較さるべき物は何にもない。どの程度の人にとっても、初歩の人にとっても、最高の域に達した人にとっても、それは幸福の源泉である。
 製作にかかっていると何もかも忘れてしまう。輪郭を見ても影を見ても敬意と優しみの心がわいてくる。自分が創造者になって、自分ながら偉大に感じられる。
 私は視力を悪くしてはならぬと思って、この3日間、日が暮れて読書することをよしている。近ごろは馬車から歩道までくらいの距離でも目がかすんで見えにくくなった。心配である。もし、声が出なくなった上に、絵と読書をよさねばならぬことになったらどうしよう! そうなったら、もう私は泣き言は言えない。なぜと言うに、私がほかにどんな苦しみを受けても人を責めるべき限りのものでもないから。また、それは神のおぼしめしだと考えられるから。
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by bashkirtseff | 2007-01-18 20:53 | 1877(18歳)
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