1877.07.15(Sun)

 私は死にたいほどに疲れている。何物も私を過たせるものはなく、何物も私に興味を起こさせるものはない。私は何物をも欲しなければ、また何物をも望まない。否、このような状態に陥っていることを恥ずかしくさえ思いたくない。つまり、草木のように、何にもしないで、何にも考えないで、それを情けないとも思われないでいたいのである。
 大尉B…が宵の口に訪ねてきて、皆して一緒に話をした。けれども私はマダム・ド・スタエルがフランス語を巧みに使いこなす外国人のことについて書いた物を読んで以来、会話に努力することがつまらなくなってしまった。彼女の説に従えば、フランス語の天才に出会ったなら穴の中へでも隠れなければならぬと言うのである。
 読書、絵画、音楽、それから倦怠(アンニュイ)、倦怠、倦怠! 人は仕事のほかに、娯楽と人生の興味が必要である。私は倦怠している。倦怠しているからといって、それは私が結婚していないからではない。否、あなたは私のことを良く思って下さるでしょうから、そんなことは想像しなさならないでしょう。私が倦怠しているのは、何一つうまくいかないからであり、それに倦怠しているからである!
 パリは私を殺しそうだ! それは一つのカフェであり、良く経営された一つのオテルであり、また一つの商品陳列所(バザール)である。しかし今に冬になったらばオペラとボア(ボア・ド・ブローニュ(底本:「プウロンニュ」))と、研究とで、私はもっとパリに慣れてくるかも知れない。
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by bashkirtseff | 2007-01-18 20:48 | 1877(18歳)
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