1877.05.29(Tue)

 私はだんだんと青春期の終わりに近づいて行くに従い、すべてのものに無関心になってきたようである。以前は何にでも動かされていたが、今では大概のものには動かされない。だから私の過去の記録を読み返してみると、そのときの印象からして私はどんなに零細なことに血を沸かしていたかを発見する。
 信頼とか信任とか性格の花とも言うべき敏感とか、そういったものはいつの間にかもうなくなってしまった。
 それだけ尚と私は感情の新鮮というものを失ったことを惜しく思う。それは一度去るともう決して帰って来ないから。それがなくなるといっそう平静にはなるが、楽しむことも少なくなる。私は失望ということをこんなに早くから知らずにいたかった。そうしたら私は一種の超自然的人間になっていただろうというような気がする。
 私は今ある本を読んで、恋愛がきらいになった。一人のかれんな公爵夫人(プリンセス)が一人の美術家を愛する! いやだ、いやだ! そう言ったからとて、私は美術家を軽しめるつもりではない。どうしたわけだか私には貴族的な傾向があって、種族の上から人間というものがけだものと同じに考えられる。貴族は時々、以前には必ず、精神的及び物質的訓練によって、父から子へとその効果を譲り伝えて今日のごとくなったのである。なぜ根源が大切だろう!
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by bashkirtseff | 2007-01-18 20:39 | 1877(18歳)
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