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日付なし

 私は書けない! けれどもなんだか書かないでもいられない。私は何もかも言ってしまわないうちは、心が休まらない。
 私は10時半まで、出来る限り根気を出して話したり、茶を入れたりした。そこへピエトロが見えた。シモネッチはやがて帰って、私たちは3人きりになった。私の日記の話になった。すなわちその中に取り扱われる題材の話になった。するとA…は霊魂と神のことを書いた部分を読んでもらいたいと言い出した。それで私は隣室に入って、評判の白い箱のそばにかがんで、探していると、ピエトロがその間ろうそくを持ってくれた。やがて皆に興味のありそうなところを探し出したので、私はそれを半時間ほど2人に読み聞かせた。
 客間へ帰って来ると、ピエトロは彼の18歳以来のさまざまの出来事を話し出した。
 私は恐怖と不安を持って彼の物語ったすべてに耳傾けた。
 彼がどこまでも人に頼っている態度は私を冷却さしてしまう。もし皆が彼の私を愛することを味方したならば、彼はきっと服従しただろうと思われる。
 彼の家族、僧侶、修道僧などのことを考えると、私はたまらなくなる。彼はどれだけ彼らの善行を褒め立てたか知らないけれども、私は彼らの専横と暴虐の話を聞くとたまらない。実際! 私はたまらない。ピエトロの2人の兄弟のことを聞いてもたまらない。けれどもそれは問題ではない。私はピエトロを受け入れるも拒絶するも自由である。
 今日はまた書けるようになったことを神に感謝します。昨日は自分の感じていることが言い表せないので、私は苦しんだ。
 今夜私の聞いたことのすべて、今私が結論することのすべて、以前に起こったことのすべてが、私の頭の上に重くのし掛かる。それから今夜彼が帰って行くのを見送ったときの、何とはなしの悲しみもある。明日まではどんなに長いことだろう! 私は不安から、おそらくは恋から、泣きたくてたまらぬ心持ちである。
 それから私は左の手にあごを載せ、左のひじを右手に載せ、まゆ根を寄せ、あざけるような唇をして、私の求めるもの、殊にこれまで私の持たなかったものについて夢見ていた。
 それから、私は書き出した。けれどもどうしても考えねばならぬように思われるので、しばらくやめていて、ここに書いただけを書き付けたのである。
by bashkirtseff | 2005-08-05 00:55 | 1876(17歳)
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