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1876.05.04(Thu)

 ニースの本当の季節は5月である。その美しさは気が狂いそうなほどである。私は新月の光に誘われて、海岸の小石の上で静かに砕けている波のささやきに交じって聞こえるカエルの鳴き声に誘われて、庭に散歩に出た。神聖な沈黙と神聖な調和!
 ナープルは不思議なところだと思われている。けれども、気の毒だが、私はニースの方が好きである。ここでは海が少しも妨げられないで、岸を洗っている。しかるにナープルでは下らない手すりのついた岸壁に海が遮られて、そのやくざな海岸の片端までが、店屋とか、露店とか、あるいはその他の邪魔物とかでふさがれている。
 「僕のこともたまには思い出して下さい。僕はあなたのことよりほか何にも考えられません!」
 彼を許してあげて下さい、私の神様。何となれば、彼は自分で何を言っているかも分からないのですから。私は彼に手紙をくれてもよいと許した。それに彼はその許しを利用しようともしないのだ。彼は約束の電報を母様へも打たないつもりだろうか?
by bashkirtseff | 2005-07-31 10:46 | 1876(17歳)
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