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1876.04.24(Mon)──ローマ

 今日は終日書いても書ききれないほどにいろんなことがある。けれども私はどれもはっきり記憶しているものはない。私はただコルソ(ローマのピアッツァ・デル・ポポロからピアッツァ・ヴェネチア(底本:「ピアツア」)へ通ずる大通)で私たちがA…に会ったことだけを覚えている。彼は喜び、輝いて馬車のところまで駆けて来て、私たちが今夜うちにいるかと聞いた。私たちはうちにいるはずであった! ああ!
 彼は訪ねて来た。それで私は客間へ行って、他の人たちと同じように極めて平気に話を始めた。彼は私に対して、彼が4日間僧院にいて、それから田舎にいたことを話した。今まで彼は家族の人たちとすっかり仲直りが出来て、これから社交界に出るので、分別が出来て、将来のことを考えていると言った。それから彼はこの前の日曜日にサン・ジョヴァンニ・エト・パオロ(底本:「ジォヴァンニ」)の僧院の付近で私を見掛けたと言った。そうして彼は自分の行っていたことの事実を証明するために私のそのときの着物のことや、その他私のしたことを話した。それで私は彼にその通りだと白状しなければならなかった。
 ──あなたは僕を愛してくれますか? 彼がついに聞いた。
 ──あなたは?
 ──ああ! それがあなたの癖です。あなたはいつも僕をからかいますね!
 ──それで私が oui (はい)と言ったら! ……
 彼は全く変わってしまった。20日間に彼は30の男になってしまったと言ってもよい。話の仕方がまるで変わっている。そうして驚くべきほどに利口になった。彼は半ばイエズスになってしまったようである。
 ──ごらんの通り僕は偽善者になっているのです。彼は言った。僕は父の前でお辞儀をして、何でもはいはい言っているのです。僕はこれで中々分別が出来て、将来のことを考えているのです。
 多分明日になったらもう少し書けるであろう。今夜はこっけいなほど私はばかになっている!
by bashkirtseff | 2005-07-31 09:28 | 1876(17歳)
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