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1884.06.28(Sat)

 私たちはルジャンドル街へ行く。まず彼は私たちを迎えるために起き上がって、部屋の中を数歩歩く。このように変わり果てた有様を見せるのをどんなにか恥じているように私には思われた。
 非常な変わり方、おお! 非常な変わり方だ。しかしそれは彼の持病の胃から来たのではない。私は医者ではないけれども、そうとは思えない。
 とうとう私は、彼があんまり変わっていたので、ただやっとこれだけしか言えなかった。──まあ! よくお帰りなさいましたのね? ──彼は気むずかしくはなく、実に人好きのする、実に友愛に満ちた、実に親切な態度になって、私の絵については、決して賞牌のことなどを気にかけないように、成功は十分だからと繰り返し繰り返し私に言う。
 私は彼に病気が欲しかったのだろうと言って彼を笑わせる。そうして、彼は太ってきたから、かえって良かったと言った。
 建築家は彼の病気がそれほど陽気に、それほど落ち着いていられるのを見て、喜んでいる様子であった。それに勇気を得て、私もおしゃべりになる。彼は私の着物から、洋傘(オンブレル)の柄のことまでお世辞を言う。彼は私を長いすの彼の足のところにかけさせた。……かわいそうにやせこけてしまった足! ……目は大きく見開いて、非常に明るく、髪の毛は乱れて。
 でも彼は非常に面白い。私は、彼が要求しているから、また彼を見舞おう。
 階下まで私を送り出した建築家も、やはりそうしてくれるようにと私に言う。
「そうしてくださるとジュールはたいそう喜びます。そうして彼はあなたに会うのを非常に幸福に思っています。彼はあなたがたいそう才能を持っていらっしゃると言っています。全くです!
 私は私の受けた歓待を忘れない。私にはそれが非常に満足であったから。
 しかしそれは非常に平和な、非常に優しい、母性的な感情であって、それを私は1つの力であると自負している。彼はきっと治るだろう、……確かに。
by bashkirtseff | 2012-05-19 13:34 | 1884(25歳)
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