1883.12.03(Mon)

 さて、私は怜悧である。才知もあれば明察も持っている。……要するに、頭脳にかけてのあらゆる長所を具備している。そうして私は正しい。ああ! これだけの条件を備えていながら、なぜ私は自分自身を判断することが出来ないのだろう? ……きっと出来るはずである。私ははっきりした目を備えているから。そうでしょう?
 私は実際芸術界における何者かであるだろうか、あるいは何物かになろうとしつつあるのだろうか? 私は自分をどう思っているのだろう
 それは恐ろしい質問である。……と言うのは、私は自分の到達しようと思っている理想に比べると自分のことをば悪く思っているから。しかし、一方、他の人たちと比較するならば……
 誰でも自分を批判することはで出来るものでない、それに……天才でもないということになって以来……私はまだ自分でさえ、自分を決定的に批判しうるようなものはなんにも描いてない。
 だから、私は自分のしているだけの仕事の前に立つと、絶望させられてしまう。私は1つの絵を描き上げるたびに、すべてをやり直したくなり、その絵をすっかり悪いと思ってしまう。と言うのは、私は常に、それをそうあらせたいと自分で思っているものと比較するからである。……しかし周囲を眺めると慰められる。もっと悪いものを描いている人たちがたくさんあって、彼らは皆賞賛されている。……では? でもそれが当世である。要するに、白状すれば、私は芸術家の自分をたいしたものとは考えていない。私はそう言いたい(誤解されたい希望から。)まず第一にもし私が自らの天才を信じていたとしたなら私は決して何事につけても自分の不平は言わないであろう。……しかし天才という言葉は、自分のことでそれを書きながら私は嘲笑しているくらい、実に嫌な言葉である。私が自分に天才のないことを言おうとする場合ですらも! ……もし私が自分に天才があると信じていたとしたら、私はばかかも知れない。
 要するに、ああ! 私は自分が天才を持っているものとは思っていない。しかし私はすべての人が私に天才のあるのを信ずるようになることをば望む。……
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by bashkirtseff | 2010-12-02 22:56 | 1883(24歳)
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