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1883.09.15(Sat)

 今朝、私はサロンにバスティアンを見に行った。どう言ったら良いだろう? それは美しさの中の美しさである。3つ肖像があるが、それは、今夜私たちと晩餐を共にしたジュリアンの言うところによれば、及びもつかないものである。そうだ、及びもつかないものである。かつてこういうものは一度も制作されなかった。それは生命そのものであり、魂である。そうして何物にも比べることの出来ないような技巧をもって描かれてある。なぜと言うに、それは自然そのものであるから。それにならって描こうとする者は狂愚である。
「実れる小麦」と題する小さい絵がある。麦を刈っている一人の男を背中から見せている。この絵は良い。
 実物大の2つの絵がある。「乾草」と「馬鈴薯を取り入れる女たち」である。
 何という色彩だろう! 何というデッサンだろう! 何という描法だろう! それは自然そのものの中でなければ見いだされない色調を持った一つの豊かさである。そうしてその人物は皆生きている。
 その色調は神聖なる単純さをもって互いに関連を持ち、そうして視線がその変化を真実の喜悦を持って追っている。
 私はそれがそこにあるとも知らずに、その部屋に入って行った。そうしていきなり「乾草」を見て足をとどめた。それは郊野の見えるように開かれた窓の前に立ち止まる時のように。
 人々は彼を正しく取り扱わない。彼はすべての人の100も上にいる。何ものと言えども彼に比ぶべくもない。
by bashkirtseff | 2010-09-01 07:32 | 1883(24歳)
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