1883.07.14(Sat)〔フランスの国祭日〕

 私たちは馬車で、飾り立てられた市中を見物に出掛ける。面白い。
 それから私は昨日の思念を続ける。
 あなたはスタンダールの「恋」を読んだことがありますか?
 私は今それを読んでいます。
 私はこれまでの生涯にかつて恋をしたことがない。あるいは、私はある空想上の人物を恋することを決してやめたことがない。どっちでしょう?
 この本を読みなさい。この方がバルザックよりも一層デリカで一層真実で、一層調和があって、かつ一層詩的である。
 そうしてこの中には、すべての者が、私でさえ、感じたことが、神々しいばかりに表現してある。ただ、私はと言うと、私は常にあまりに解剖家だった。
 私はニースで、子供の時分に、そうしてそれもまだ何にも知らずに恋をした以外には、本当に恋をしたことはない。
 それからはあのピエトロを恐れるの念に対するある病的な誘惑があった。
 私は、ナープルの夕暮れに、たった1人でバルコンによって、セレナードを聴き入っていた、あの真に快美な瞬間を思い出す。その地方と、夕暮れと、音楽とがあるばかりで、目的もなく理由もなく、ただわれを忘れるような心地のせられたあの瞬間を。
 私はこうした印象をパリではかつて受けたことがない。このほかイタリアを除いたどこにあっても。
 もし人に何かと言われるのを恐れなかったら、私はすぐにX…と結婚していたかもしれない。私はすぐれた人物に落ち合うのを待っていた方が、自由で平安であろう。そうして、他方から言えば、平凡な何の非難するところもない1人の紳士と結婚するのは、私を不幸にするか、でなかったら、つまらなくさせてしまうだろう! ……
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by bashkirtseff | 2010-08-09 07:55 | 1883(24歳)
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