1883.06.22(Fri)

 ボジダアルが9時から来ている。彼はずいぶん変な男である。空想的で、無頓着なこのスラブ気質のおもなる特長は、即興を愛する点である。彼は誰とでも友達になると、その空想の限りを尽くして友達を名誉あるものにしてしまう。彼はある期間は、夢中になって人に愛着する。
 かわいそうな芸術家たち! 45にもなる男たちが、礼装やら出来の悪い服やらを着て、真っ青な顔をして、興奮して、賞牌欲しさに大臣のジュール・フルリの手を握りに行くのを見たときには、言うに言われない印象深いものがあった。
 1人の善良な彫刻家は、彼の小さな箱を持ってきて、席に着くやいなやそれを開いた。そうして幸福そうな子どものような美しい微笑が、不用意にそのほほに浮かんだ。
 私の方では、ほかの人たちの顔も見ながらも、やはり少しはびっくりさせられた。そうしてしばらくは立ち上がってそのテーブルのところへ進んでいくのが、何だか恐ろしいことのように思われた。
 叔母とヂナは私の後ろの長いすにかけていた。なぜと言うに、褒美を受ける人たちはいすを与えられる権利があったから。……
 さて! 賞品授与の日はこうして過ぎ去った! 私はこんな風だとは思っていなかった。
 おお! 来年は、賞牌を取ってやろう! ……そうして何もかも夢のようについには来る。打ち勝って、喝采されるように!
 もし私がこんなに不幸でなかったら、それはあまりに美しく、そうして、到底不可能なことであるかもしれない。……それで、あなたが第2賞のメダイユを得たとすると、さらに大賞牌が欲しくなるでしょう? もちろんです。
 それから十字章は? ──何で否やがありましょう? ──それから? ──それからは、仕事と労苦の成果を享楽し、労作を続け、出来うる限り同じ高さを維持して、努めて幸福になって、誰かを愛します。
 そうだ! 私たちは後で会いましょう。何も急ぐことはありません。彼は5年たったからとて、今日より醜くも、年寄りにもなりはしまい。そうしてもし私がこのようでいて今結婚するとしたら、多分私はそれを後悔するに違いない。……でも結局私は結婚せねばならぬ。私は22である。そうして私は年より上に見られる。と言って、私が老けて見えるわけではない。私は13の時、ニースにいたころ、17と思われた。私はそう見えていたのだ。
 つまり……真実私を愛する誰かと私は結婚する。そうでなかったら、私は女の中でもっとも不幸な者になってしまうに相違ない。でも、その誰かは、少なくとも私の心に適した人でなければならぬ。
 有名になることだ、非常に有名に、著名に! そうすれば何もかもうまくいくだろう。……否……私を尊敬し、私を愛し、そうして良き配偶となってくれる理想の人に巡り会うだろうなぞと当てにしてはならぬ。
 有名な婦人たちは尋常普通の人間を恐れさせる。そうして天才はまれである。
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by bashkirtseff | 2010-08-04 07:55 | 1883(24歳)
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