1883.05.09(Wed)

 今夜特別の一組があって、私たちの習慣的の交際をひどく脅かしたけれども、それは私には非常に興味があった。
 ジュール・バスティアンは自分を浪費しない人である。彼はただ1つの点にすべてを集中するように心と力とその他すべての物の経済を力強く説く。さて、私にはすべての物の充実があってもし私が自分を消耗しなかったならば、それに耐えられないかも知れないと思われる。言うまでもなく、談話とか笑いとかいうものはあなたの力を減らす。あなたは、それをやめた方が良いと思う。……けれども彼の言うことは正しいに相違ない。
 私たちはアトリエへ上がった。もちろん私の大きな画布は壁の方へ向けてあった。そうして私はバスティアンがそれを見ようとするのを戦争をするようにして防いだ。彼は画布と壁の間に入り込んでいたので。
 私はサン・マルソーを誇張して褒めた。ジュール・バスティアンは彼に対して嫉妬を抱いているということと、少しずつ彼を追い越しているということを話した。
 彼はそのことを何度も繰り返した。そうしてこの間もそう言った。──さてそれがもし愉快であるならば、それは私をも喜ばすであろう。
 彼は技巧的な言い方をすれば、サン・マルソーが彼よりもより多く尊敬されているということを考えているに相違ない。私はいつも彼に聞く。──いいえ、あなたもあの方はお好きなのでしょう。そうじゃありませんか?
 ──ええ、非常に好きです。
 ──私があの方を好いているくらいお好きですか?
 ──ああ! 否、私は女ではありません。私はあの男は好きです、が……
 ──でも私があの方が好きなのは女としてではありません!
 ──しかしあなたの称賛の中にはそういったような点があります。
 ──いいえ、私はどこまでも誓います。
 ──いいえ、無意識にそうでしょう!
 ──ああ! あなたにはそう考えられますか! ……
 ──そうです。私はあの男に嫉妬を感じています。私は美しい暗色じゃありませんからね。……
 ──あの方はシェイクスピアに似ていますわ。
 ──なるほど、……
 バスティアンは実際に私を憎もうとしている! なぜだろう? 私には分からない。私は恐怖を感じている。──私たちはお互いに敵である。そこには誰でも感じる説明の出来ない小さいことがいろいろある。私たちは同情し合ってはいない。そうして私は彼の前では彼に……多分私を好きにならせるようなことを言うことをちゅうちょする。
 私たちは芸術について同じように考える。それでも私は彼の前では言わないでいる。それは私が彼に好かれていないと思うからであろうか?
 要するに、そこには何物かがある。……
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by bashkirtseff | 2010-07-16 08:03 | 1883(24歳)
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