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1883.03.22(Thu)

 昨日私は粘土で作った小さい像を拡大するための骨組みを組み立てるのに2人の専門家を呼んだ。そうして今日は下図を描いてこしらえようと思う動作をそれに与えた。……非常に気に入った。神聖な婦人たちの絵を、この夏はどうしても描きたい。そうして彫像においての私の大なる望みは、アリアアヌ(テセウスを恋して、やがて捨てられた女)を作ることである。それまで私はこの女を作ろうと思う。この女は真っすぐに立った形をしている。絵の中の今1人のマリアも真っすぐに立っているけれども、彫像においては、着物がないのと、若い女を選ぶので、それは愛すべきナウシカアー(漂着したオデュッセウス(底本:「ユリス」)を助けた若き王女/底本:「ノオシカア」)になりそうだ。彼女は両手の間に頭をうずめて泣いている。その姿勢には実際のあきらめがある。非常に完全な、非常に若い、非常に誠実な、非常に悲痛な絶望がある。だから私は気に入ったのである。
 ファアシア人の王の娘なるナウシカアーは古代のもっとも愛すべき1人である。2流の人物ではあるが、しかし魅力に富んだ興味ある人物である。
 私は老いたるペーネロペー(オデュッセウスの妻)の首を絞めても、オデュッセウスをして、彼女の父の宮殿の赤い大理石の円柱にもたれかかり、その冒険談を聞きながら恋に落ちたるかの理想の娘(ナウシカアー)と結婚させたかったというオウィダの意見に全然同意である。1つの言葉すら2人の間には交わされなかった。彼は別れて行った。彼の国と彼の仕事へ向かって。ナウシカアーは岸に取り残されて、大きな帆の消えていくのを眺めていた。そうしてすべてが青い水平線に消えうせてしまったとき、彼女はその頭を両手の中にうずめて、その指で顔の上と髪の中に当てて、自分の美をば顧みないで、肩をそびやかして、胸を両手で押し付けて泣いた。
by bashkirtseff | 2010-06-28 08:08 | 1883(24歳)
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