1883.01.08(Mon)

 誠にこの人はフランスとほとんど全世界を満たしていた。すべての人が何となく物足らぬように感じているに相違ない。例えば、新聞を見ても読むものがないとか、議会でもなすべきことがないとか言う風に感じられて。
 もちろん、これ以上に有用な人はあるに相違ない。労働者とか、発明家とか、辛抱強い行政官とか。しかし彼らは決してこの名声、この魅力、この勢力を得ることはないであろう。熱情や熱心を鼓舞したり、人を集めたり団体をまとめたり、国家の英雄的代弁者となったり、これは有用な熟練な称賛すべきことではないだろうか? ……国家に活力を与えたり、大事に望んですべての目がその方を向く旗となったり、これはかの政治的品質とか、道徳とか及び成熟したる政治家の怜悧なる手腕とかいったものより以上ではないだろうか? ──今仮にヴィクトル・ユーゴー(この時81)が今夜死ぬとする。そうしてもそれほどに人を動かさないであろう。彼の作品はそこにある。彼が今日死ぬと、10年前に死ぬと、それは多大に問題にはならぬ。何となれば彼の事業はすでに終わっているから。しかしガンベッタは生命であった。彼は毎朝新しく昇る日の光であった。彼は共和国の魂であった。彼は全国家の光栄であるか堕落であった。勝利であるか、こっけいであった。事件はことごとく彼に集まった。彼は代表者であった。彼は私たちが決して再びその身ぶりを捕らえることも出来なければ、声の調子をつかむことも出来ない行動及び談話における1つの叙事詩であった。ほとんどフランス全体とも言うべき党派の驚くべき権化であり、またあらゆる点において人の心を同情と恐怖と嫉妬と称賛と憎悪を持って震動せしめるすべてのものの管理者であった。そうしてすべてが永久に終わりを告げてしまった!
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by bashkirtseff | 2010-06-17 08:04 | 1883(24歳)
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