1882.08.13(Sun)

 今は朝の3時である。私は眠れない。昨夜トニーに「くず拾いの女」の習作を見てもらったら、「まずまず」と言われた。それから新しい下絵を見てもらったら、大層良いと言われた。けれどもその下絵は新しいものではない。私が引き裂いて何度も描き直した最初の絵に良く似ている。どうしても物は最初に見たときに理解しておかねばいけないと思う。ことに自分の感じた物についてはそうだと思う。R・F・(ロベール・フルリ)の言ったことは正しい。今度の絵はどっちかと言えば描きやすい。動作が夜のことで部分的に別れていないので。そうしてシルエットが影になって浮きだしているので。実際、空や人物や土地の関係を良くつかまねばならぬ。それからその瞬間の詩を表さねばならぬ。ちょうどそのとき起こった事件の深い恐ろしい寂しさを表さねばならぬ。
 今私はそれを見いだしたと彼は言った。状態の感じが深く出て、鋭いと言った。何でも自分の感じた通りに出すのに限る。調子がうまくいって、物と物との関係が正確に出せたら、非常に良い絵になるに決まっている。
 そうだ、それだけのことである。一方から言うと恐怖で、一方から言うと狂気である。
 それに相違ない。
 それから夜が更けて私は寝た。その日、自然主義のことや絵のことや市街のことについて議論したことはもう考えないことにして。もう絵のことよりほか、私は何にも考えていなかった。私の想像力はまた働き出し、そのことばかりが頭にあった。私は仕事にかかって、仕上げて、持ち帰って、出品した。人がその前にたかって見ていた。感激して私はのどに大きな塊が出来て、訳もなく心配になってきたり、それから非常にうれしくなったりした。そんな風にして苦しみながら、震えたり汗をかいたりしているうちに、目が覚めて起きたのが3時であった。それから読んだり、書いたりしている。しかし私は自分に対する恐ろしい欺きを考えている!! 私は何事も知らないから、それで……。それに宵の口に飲んだ2杯の茶が私を眠らせなかったのであろう。おお! 否! ……
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by bashkirtseff | 2010-05-14 08:03 | 1882(23歳)
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