1882.08.10(Thu)

 座りの終わりころになってトニーは左手を擦り消してしまった。学士院会員でも、名誉賞を取った人でも、やっぱり……。何より彼は非常に良いものを描こうと思ったのである。初めはうまくいきそうもなく思われて、夜うなされたり、ひどく頭痛がしたりしたと私に言った。
 その悩みは私も良く知っているから、どんなに私は同情したことでしょう! ……それは友情のない者には分からないことである。
 彼は私と同じく毎晩日記を付けている。私のことをどう書いているとあなたは思いますか? 彼はブレスロオの月桂樹が私を眠らせないと思っているでしょう。……しかし、どの程度まで私が自分の劣っていることを認めているかも彼は知っているはずです。……今私は私の絵のことを言っているのであるが、それさえ何だか仮定のような気がする。ほかの有象無象までが皆「私の下絵が、私の絵が」というのを聞くから、私も……。そうしてもしそれがこっけいに思われるとすれば、それは公言する権利を私が高く評価するからである。そうしてあまりになれなれしい、釣り合いの取れないほどの取り扱いを受けておとしめられたくないと思うからである。お分かりでしょうか?
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by bashkirtseff | 2010-05-14 07:52 | 1882(23歳)
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