1882.07.25(Tue)

 気持ちの良い晩で、皆が落ち着いている。静かな楽しい対話が、荘重な音楽の中に和らいでいるように思われる。絵のことについては誰も一言も私に話しかけない。食事前にジュリアンがアトリエに来てもう一度下絵を見てくれた。それから木炭とパステルで描いた人物を見てくれた。
 それは私の気に入った絵である。去年の絵は私には見る気にならない。何らの興味もないから。
 おお! 何とかして私はうまく仕上げたい。ジュリアンのことが私の頭の中に入ってくる。私は彼がこの美しい光景の中にそんなに深く入ってこようとは思わなかった。(それは私の間違いであった。)実際そうである。人は静寂と荒涼において何か恐ろしいことをしでかす。……それはすべてのものの終局である。女は悲痛の表現以上のものである。女は完全な恐ろしい1つの無限の戯曲である。それは魂の麻酔であって、そこには何物も残されていない。……そうして女の経歴を考えてみると、身の毛もよだつほどの人間的な、興味の多い威力のあるあるものがある。
 私は果たして成功しないだろうか、成功は全く私自らを基礎としているのに? 私は自分の手で何物かを作り上げねばならぬ。けれども片意地なたわむことのない私の熱烈な意力だけでは足りない。私の感じることを他人と共に分けたいという強い希望があれば、それで十分でないだろうか? それは疑う余地もないことである。それは私の頭を満たし、心を満たし、魂を満たし、目を満たすところのもので、私は単なる物質上の困難にさえ打ち勝てないであろうか? ……私はどんなことでも出来うるような気持ちがする。ただ、気にかかることは、病気にならねば良いがということである。……私はそれを避けるように毎日神に祈ろうと思う。
 私の手は私の頭の命じることを表現する力がないのであろうか? 確かに、ない!
 ああ、神様! 私はひざまずいてその幸福をお否みにならぬようにあなたにお願い申し上げます。ある限りの謙譲において、私はあなたの前に、ちりほこりの中に身を投げ出してそのことをお願い申し上げます。──私に力を貸して下さいというのではなく、ただ多くの妨げなしに仕事を続けさせて下さいということを。
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by bashkirtseff | 2010-05-07 08:01 | 1882(23歳)
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