1882.07.12(Wed)

 私は今例の絵に着手する準備をしている。これは大変に骨が折れそうである。まず私の想像しているような景色を見つけ出さねばならぬ。それから岩の間に彫られた墓を探さねばならぬ。私はパリの近くでそれを描きたい。例えば、カプリなどで。カプリは全く東洋的である。そうしてあまり遠くない。岩はどんな岩でも良い。けれども本当の墓が必要である。アルゼリに行ったら、何かあるだろう。ゼリュザレムならばもちろん。岩の間に彫り広げられたユダヤ人の墓を見つけたい。それからモデルは! おお! そこへ行ったならば、本当の服装をした立派なモデルが見つかるであろう。ジュリアンはそんなことは空想だと言った。彼は言った。「大家がその場所へ行って描くというならば私には良く分かります。なぜと言うに、彼らは自分に足りないただ1つの物を求めに行くのですから。──地方色と本当の真実を。けれどもあなたには足りない物がまだたくさんあるでしょう!」なるほど! しかし、それが取りも直さず、私の求めに行かねばならぬものであるように私には思われる! 何となれば、私の望みうる唯一の成功は、自然に忠実であることよりほかにはないであろうから。もしそうだとすれば、ほかに何物も持っていない私が、どうして地方色を捨てる訳にいこうか! もしこの絵をサン・ゼルマンで、バチノオユのユダヤ人を使って、出来合いの服装をさせて描いたとしたならば、果たしてどんな力が現れるだろう? ……しかるにその地へ行ったならば、本物の着古された着物や、注文してはとても出来ないような効果が見いだされるであろう。けれども旅行に暇がつぶれる。行きに2週間、落ち着くのに2週間、ざっと1カ月かかる。9月15日に出発すると22日に着く。そうして10月10日には仕事にかかれるであろう。私は3カ月を費やすつもりである。……写生するのに1週間、準備に1週間。そうして10月24日には絵の具を塗り始めて、11月1日には、主な首が出来るであろう。体は11月10日までかかって、11日からその次の人物を始めて、それがまた10日かかるであろう。11月27、28、29、30日は輪郭を描くのに使い、さらに10日を背景に費やして、それで12月10日になる。ただし、これは私に出来そうに思われる時日の約2倍を計上したのである。
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by bashkirtseff | 2010-05-07 07:54 | 1882(23歳)
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