1882.06.30(Fri)

 私は落ち着けないで歩き回っている。何にも出来ない。何だかこだわりがある。この間、そのことをジュリアンと話した。ジュリアンは、とにかく私は1年半も何にも描かなかったと言った。もっとも1カ月だけ気まぐれに仕事をしたことはあったけれども、その後はまた何にもしなかった。
 継続もなければ、規則正しさもなければ、精力もなければ、全くそうである。私には固執するということがない。私は毎週1枚ずつ習作を描いて自分の仕事を進めていくはずであった。しかるに、そんなことはしないで、いろいろなことを50種類も追っ掛けて、何か気に入ったことがあると、そのたびに思うように出来ないと言っては失望した。私はアトリエへ帰ろうと努めた。しかし帰ることが出来なかった。私は自分1人で仕事をしていくことが出来るだろうか? 今ではどこへ行ったらよいのか、何をしたらよいのかも分からないで、当惑している。私は簡単な習作1つ作る力もない。私は日ごろあまりに多くを計画していたに相違ない。だから、それをやり通すことが出来なくて、絶望に陥ったのである。もう私は神経を使い果たしたような状態になっている。……要するに私はもう絵は描けないであろう。これまでも、決して、決して、決して良い絵は描けなかった。6年間私は絵を描いてきた。……その中の半分は空費してしまった。けれども結局同じことである。……結局私は息が切れてしまった。またやり直すのには勇気と意志がなければならぬ。それは自然に帰って来るであろう。私は後戻ろうと思っている。……いや、大波でも来なければ私は再び浮かみ上がることは出来ない。……その大波というのは辛抱強い努力の連続にほかならぬものではなかろうかと思っている。……けれどもまたそれが出来なくはなかろうかという恐ろしい心証が起こってくる。
 それでは彫刻へでも入っていこうか!
「またそうして絵に帰ってくるのでしょう。しかもなおと力弱くなって。……」
 そのときはどうしよう? そうしたら死んだ方がよい。
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by bashkirtseff | 2010-05-02 21:29 | 1882(23歳)
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