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1882.05.28(Sun)

 フィツ・ゼエムス公爵夫人が訪ねてきて、今夜息子の嫁のところへ、私たちを連れて行きたいと言った。そこでは舞踏会があるはずであった。母は公爵夫人のことを世界一の愛想良い人だと言った。母と公爵夫人は始終行き来しているが詳しいことは私は知らない。私たちはその正体に応じて一緒に出掛けた。
 何もかも完全であった。最上の社交、最上の若い、新鮮な、快活な婦人たち、最上の服装。老公爵夫人にはちょっと数え切れないほどのおいやめいや孫たちがあった。私の聞いた名前だけでも皆有名なパリで聞こえた貴族たちばかりであった。私の紹介された2、3の人はことに優れた人たちであった。私自身はその客間に入って愉快ではあったけれども、今朝ほど描き上げたパステルのことが絶えず気掛かりになって、その欠点を思いだしては嫌な思いをしていた。
 その上、こんな風では社交界に入ることはおぼつかない。……少なくとも私は社交に慣れるまでに2カ月くらいはかかるだろう。ところであなたは私が社交に興味を感じたと思いますか? ……私はそれをばかばかしい、間の抜けた、退屈なものと思います! この世の中にこんなもののためにのみ生きている人があると思うと、驚かないではいられない! 私自身は時々はそれを見に行っても良いと思う。例えば流行社会ではどんなことが行われているか、ということに興味を持って。けれども偉い人たちが行くように、ただ気晴らしに行くだけである。決してホッテントット人や月の中の人間のようなまねをしたいわけではない。
by bashkirtseff | 2010-04-23 07:54 | 1882(23歳)
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