私たちはマルセイユにいる。金がまだ着かない。叔母が私をあまり待たせたくないのでダイヤモンドを質に入れに行った。私はだんだんと私の町なるニースへ近づいて来るように思われる。ニースはなんと言っても私の町である。フロランスならば私の物を皆持って行ったらば住みよいであろう。私は着物と帽子にブラッシュをかけさせて、町を散歩しようと思って叔母の帰りを待っている。
ある停車場で私は小説を一つ買った。けれども大層まずく書いてあるので窓から投げ捨てた。すでに十分悪くなっている私の文体を損なうことを恐れたからであった。それで今私はエロドオト(ヘロドトス/#古代ギリシャの歴史家、『歴史』の著者)に帰ってそれを読みかけている。 ああ! 面白いことになった! 気の毒な叔母! 私は彼女の前にひざまずいた。どんなところへ彼女は行ったのだろう? どんな人に会って来たと思います! それも皆私のために! 彼女はモン・ド・ピエテ(質屋)はどこにあるかと御者に聞くのを恥じて、ダイヤモンドを預かるところはどこにあるかと聞いた。私たちはそのダイヤモンドを預かるところが面白いと言って笑った。午後1時に私たちはこの嫌なにおいのする町を立つことになった。 アンティーブ(ニースに近き海岸の町/(底本:「アンチイブ」)から先は、私はニースの歌ばかり歌っていた。それを見て鉄道の従業員たちが非常に驚いていた。近くなればなるほど、私たちの性急な心はますます激しくなった。
by bashkirtseff
| 2004-12-05 15:20
| 1874(15歳)
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