1881.11.17(Thu)

 昨日は胸とのどと背中が苦しくて、ほとんど動くことも出来なかった。風邪をひいていたので咳が出て、何にも飲み下すことが出来なかった。そうして、絶えず熱くなったり、冷たくなったりした。
 今日はいくらか良い気持ちである。けれども要するに大差はない。私はこれまで長い間一流の医者にかかっていたけれども、未だにこんな状態である! 私が初めて声が出なくなって以来もう何年になるだろう! それは私が自分の心に背いて海に投げ入れたポリュクラテスの指輪(サモス王ポリュクラテス(底本:「ポリクラテス」)は不足と言うことを知らぬ身分であったがエジプト王アマシスの忠告をいれて宝玉中の一番大事な指輪を海に投げ入れた/底本:「ポリクラアトの指輪」)であった。しかし! この恐ろしい病気が私に取り付いているから、私は別の成功によってその補いをつけねばならぬ。……私がどれほど成功しても、……私には不足なものがないなどと言うことは出来ない。これで私は安心することが出来る。
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by bashkirtseff | 2010-02-21 19:28 | 1881(22歳)
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