1881.10.22(Sat)

 今! 私たちは有名なセビリャ(エスパアニュの同名の州の首都、コルドウの西南/底本:「セヴィル」)に来ている。私はここでかなり暇をつぶしている。博物館を見たが、大きな単独の室にムリーリョ(エスパアニュの画家/1618-1682/底本:「ムリロオ」)ばかりがある。私にはもう少しほかのものも並べてもらいたかった。なぜと言うに、聖母や聖画ばかりであるから。私は野蛮人で、粗雑で、無知で、無遠慮ではあるけれども、まだ本当の聖母らしい聖母を見たことがない。ラファエルの聖母は写真で見るときれいである。……しかしそれはこの次にいま一度見たときのことにしよう。白状すると、ムリーリョは赤い丸々した顔の聖母を幾つも描いているが、私は少しも感心しない。ルーヴルに人のよく模写する聖母が1つある。それは実際感激を持って描かれたもので、ほとんど神聖と言えるであろう。
 それから、葉巻と紙巻きたばこの工場がある! 何というにおいだろう! それがただたばこだけならそれまでのことであるが、腕と首をむき出しにした女たちが入り乱れていて、若い娘たちや子どもたちも混じっている。この人間の群れは大部分きれいな女ばかりで、甚だ奇観である。エスパアニュの女たちは、ほかの女たちには見られない美を持っている。カフェの歌い姫にも、巻きたばこを巻く女にも、女王のような豊艶(ほうえん)な美が見られる。のどの格好や、腕の丸みが、美しい形と整った色をしている。何という見事な人間たちだろう。
 その中に1人際だって女王のような歩きぶりで、また猫のような柔らかみで、たばこの葉の間から立って出てきた女があった。その女は素晴らしい首を持っていた。そうして人を幻惑させるような容ぼうと、腕と、そうして、その微笑! ……さて、単に粋な女たちのことは言うまでもない。年若い娘たちは皆快活で、陽気である。たまには醜い娘もいるが、それは極めてまれである。そうして醜い娘たちにも取りえがある。
[PR]
by bashkirtseff | 2009-12-09 07:53 | 1881(22歳)
<< 1881.10.25(Tue) 1881.10.20(Thu) >>