1881.10.04(Tue)

 ちょっと待って下さい。私たちは昨日の続きを済ましておきましょう。
 ブエン・レチロから私たちはあるカフェに行き、ジタヌ(ジプシー)風の歌を聴いたり踊りを見たりした。
 それは非常に奇妙なものであった。1人の男がギターをかき鳴らしていると、12人の女が手を打って拍子を取り、その中の1人が急に何かの歌を歌いだすのであるが、それはめちゃめちゃの半音階である。実際それは全くアラビア的である。1時間すると全く飽きてしまう。この女たちは化粧着を着て、肩に肩掛けを掛け、髪に花をさし、モスリンまたは木綿のその化粧着で非常に特長のあるでん部の運動を隠している。エスパアニュの女は、きれいでないものでも、皆絵にするのによい。顔色からいっても、目からいっても。ああ! 彼らを見た後で始めてエスパアニュの絵の優れていたことが分かる! 何という光、何という筆触、何という幅、何という色であろう!! ……
 今朝9時から私は博物館に来てヴェラスケスを見ている。そのそばに出ると、リベラを除けば、すべての絵が干からびた色のないものに見える。しかしリベラといえどもヴェラスケスには及ばない! …… ある無名彫刻家の肖像にカロリュス・デュランの技巧の鍵ともいうべき1つの手がある。この人がヴェラスケスの作品を踏襲しているのは隠れもなきことである。
 私たちはエスパアニュのギターとマンドリンを買った。世界中の人はエスパアニュがどんな風の国であるかということについて何にも考えを持っていない。そうしてマドリッドは私たちがこれから行くことになっているトレエド(トレド)、グルナアド(グラナダ)、セヴィルなどに比べると特長のない町だといわれている。……けれども私はこの町が気に入った。そうして博物館に行って模写をして、その後で絵を1枚描きたいと思っている。それには2カ月位ここに逗留(とうりゅう)したいつもりである。
[PR]
by bashkirtseff | 2009-11-18 07:57 | 1881(22歳)
<< 1881.10.06(Thu) 1881.12.02(Sun)... >>