1881.09.17(Sat)

 今まで私がビアリッツに対して期待していた優れた自然の美は1つも見られない。海岸だけでいっても芸術的見地から見ると、それは不愉快でかつ醜である。
 おお、ニースの海! おお、ナープルの海、さてはニース、エゼンス、ボオリウなどの付近にある小さい海岸。しかるにこの地では投げ散らされたような無数の小さな岩で人は妨げられてある。それはボール紙でこさえた装飾のように見える。浜が小さくて、右手に灯台があって、左手は岩になっていて、その先に2つの塁壁と荒れ果てたままの大きな海岸がある。
 眺望は粗野で、画的なところがなく、海の縁に家1軒もなく、歩くのにはいつも登ったり、下ったり、また登ったりしなければならぬ。私は馬車で2時間ほど近所を探し回った。けれども画題になるようなものを1つも見いださなかった。漁師も、小舟もなかった。ただもみの木と別荘と国道があるきりであった。このくらいならばエスパーニュに行っただろう、そうしたら、博物館も見られるし、模写も出来たであろう。多分絵も描けたであろう。とにかく何かの研究が出来たであろう。本当に1カ月ないし6週間を静かに人知れず旅行かばんと一緒に暮らさねばならぬのであろう。
[PR]
by bashkirtseff | 2009-11-05 07:53 | 1881(22歳)
<< 1881.09.18(Sun) 1881.09.16(Fri)... >>