1881.07.27(Wed)

 ジュリアンのところへ行って私の描こうと思っている1つの画題を話したが、彼はあまり喜ばなかった。2時間彼は私の健康のことのみを話していた。そうして少しも包み隠すところなしに。
 それは容易ならぬことのようにも思われる。2カ月の治療も何の効果がなかったのだから、彼は真実そう思ったのであろう。私自身でも容易ならぬことだということは知っている。そんな恐ろしいことは信じないまでも、自分が病気であって次第にやせ細っていくことは知っている。ブレスロオは賞状を受けた。いろいろの注文も受けている。マダム・……はブレスロオの保護者で、自分のうちでブレスロオに有名な画家を皆引き合わせている婦人であるが、この次のサロンには自分の肖像を描かせるそうである。ブレスロオはすでに34枚も売った。彼女は実際すでに乗り出しているのである。それに私は? 私は肺が悪い。ジュリアンは私に体を大事にするようにとばかり言って私を驚かした。希望さえあるならば、私とても体を大事にしないではいられない。私の年ごろでそんな病気にかかるのは痛ましい運命である! ジュリアンの言ったことは正しい。今から1年もたったら、私はどんなに変わっているだろう。私というものについては、もはや何物も残されてないであろう。今日私はコリニョンを訪問した。彼女もやがて死ぬだろう。何という変わり方であっただろう! ロザリに私は注意されていたけれども、それでも彼女を一目見ると全く驚いてしまった。死そのものであった。
 部屋の中には非常に強烈な人を悩ます肉汁のにおいがこもっていた。実に恐ろしい!
 私の鼻にはまだそのにおいが残っている。気の毒なコリニョン、私は彼女に柔らかい白絹とカチーフを持っていった。それは私の大好きなもので、5カ月もちゅうちょしていたが、天は必ずそれに報いてくれるだろうと思ってこの絶大の犠牲をなすことを決心したのである。この打算がすべての価値を奪い去った。あなたは私が弱くて、やせて、青ざめて、死にかけて、いや、死んでいると考えられますか?
 そんな状態になることはあまりに恐ろしいことではありませんか? しかし、少なくとも、若くて死ぬということは世界に哀れみの心を起こさせるでありましょう。私は自分の運命を考えると自分ながら心を動かされます。いや、そんなことはあり得ないことに思われます。ニース、15歳、3美神、ローマ、ナープルの物狂い、絵画、野心、無限の希望、そうしてついに棺の中に入るのである。何物をも得ないで、恋さえもなくして!
 私の思ったことは正しかった。私のような体で子どもの時からこんな生活をしてきた者は、生き永らえることは不可能である。年取るまで生きるということは、あまりに多くを意味するであろう。けれども世の中には私が夢想したよりもはるかに幸運な人がいる。
 ああ! 何ほどの悲しみはあっても、その中に一味の喜びは感じられる。私の思ったことは正しかった。唯一の恐ろしい痛手は自愛の痛手である。その中には何物もなく、それは死よりも悪い。しかしその他の物は? ああ! 神、死、希望なき愛、分離! すべて生である。ああ! 私は今泣きそうになっている。私の健康は救うべからざる程度に壊されて、まさに死なんとしている。ああ! しかし私はそれを嘆いているのではない。私は耳のことを嘆いているのである! それからブレスロオがある。しかしブレスロオも1つの重荷である。至る所で打ち負かされ、至る所で拒まれている。
 やはり死をして来たらしめた方がよい!
[PR]
by bashkirtseff | 2009-10-23 08:00 | 1881(22歳)
<< 1881.08.09(Tue) 1881.07.26(Tue)... >>